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2014 年度 実施状況報告書

乳酸菌の皮膚角化細胞炎症応答抑制に基づくアトピー性皮膚炎改善効果の検証

研究課題

研究課題/領域番号 25850190
研究機関信州大学

研究代表者

河原 岳志  信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (30345764)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード乳酸菌 / 皮膚角化細胞 / TLR2
研究実績の概要

ヒト角化細胞株HaCaTにおけるLactobacillus属乳酸菌によるTARC発現抑制作用に関して、その作用メカニズムの解析を行った。
これまでの検討において最も強い抑制作用を示したLactobacillus reuteri JCM1112株の加熱死菌体によりHaCaT細胞を刺激し、TLR2を介したシグナル伝達において誘導が想定される分子について経時的に発現量の変化を観察したところ、脱ユビキチン化酵素であるTNF-α-induced protein 3(A20)、Cylindromatosis(CYLD)の発現に有意な上昇が確認された。
そこでこれら2つの分子に対するsiRNA導入によるノックダウンを行い、乳酸菌死菌体刺激後のTARC発現抑制に関する影響をみたところ、A20分子のノックダウン条件下でTARCの発現抑制が弱まる傾向が観察された。またsiRNAによるノックダウン条件下でTNF-αによるTARC誘導を行ったところ、A20分子のノックダウン条件下ではTARCの誘導が有意に増加したため、A20分子の誘導が本乳酸菌株によるTARC発現抑制に働いている可能性が示唆された。
また興味深いことに、TLR2シグナル伝達下にあるA20ならびにCYLDの代表的なターゲット分子であるtumor necrosis factor receptor-associated factor 6(TRAF6)をノックダウンすることで、TNF-αによるTARC誘導がほとんど消失することが明らかとなった。TRAF6のTNFRを介したTARC誘導への関与についても確認を行う必要があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の検討において乳酸菌の作用はTNF-αによって誘導されるTARC誘導に対して有効であり、共刺激として用いたIFN-γに対する誘導には大きく影響しなかった。これらのことから、TNFRを介したTARC誘導機構に対して乳酸菌の刺激後に何らかの抑制作用がもたらされることが考えられた。今年度の目標は、乳酸菌の刺激後にTARC誘導応答の抑制が見られる作用機序に関して解析を進めることであった。
検討を行うにあたりTLR2を介して誘導される何らかの抑制分子の誘導が起こり、その分子がTLFRシグナル伝達経路にも働きかけ、TARCの誘導を抑制している可能性を想定した検討を行った。その結果、K63ポリユビキチン化によるシグナル伝達過程を抑制するA20とCYLDという脱ユビキチン化酵素の関与をとらえることができた。
siRNAによるノックダウンを行うことにより、Lactobacillus reuteri JCM1112株が皮膚角化細胞のTLR2を介してTNF-αによるTARC誘導を抑制する際に、A20分子の誘導が特に大きな要因になっている可能性が示された。またTNF-α受容体(TNFR)シグナル伝達下でA20やCYLDの制御を受ける分子としては Receptor-interacting protein 1 (RIP1) が知られているが、上記の結果からはRIP1だけでなくTRAF6が皮膚角化細胞におけるTNF-αによるTARC誘導に重要な働きを持つ可能性が示唆され、A20分子の誘導からRIP1やTRAF6の脱ユビキチン化誘導によるTARC誘導抑制という抑制メカニズムに関する情報が得られた。
また今年度の申請内容に掲げていた、来年度の動物試験の実施に向けた塗布試験の条件検討についても計画通り実施することができた。

今後の研究の推進方策

最終年度であるH27年度は細胞培養試験の結果に基づき、実際にマウス生体に対する対象成分の塗布試験を実施し、有効性を検証する。
本研究は生体において皮膚のバリア機能が大きく低下した状態を想定した検討となるため、そのモデル動物として先天的にバリア機能の低下がみられるアトピー性皮膚炎を発症するNC/Nga系マウスを検討に用い、さらに界面活性剤であるSDSを併用して皮膚バリアを低下させた環境を形成させる。また同マウスを用いた予備検討により、対象成分をエタノールに溶解させることで特別な基材を用いることなく効率よく浸透させることができることがわかったため、菌体破砕処理後の抽出物を直接塗布した形で検討を行う。皮膚症状の発症は、代表的な皮膚炎原因物質の一つであるコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)の抽出物を含む軟膏剤を用いる。
また当初の予定には入っていなかったが、昨年度の検討で脱ユビキチン化酵素A20の誘導を介した抑制機構の存在が示唆されたため、これに関連する補足データの所得も行い、学術誌での論文発表に向けた補足検討を実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

検討がおおむね順調に遂行できたことにより、少額の残額が残ったため。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額は、平成27年度請求額と合わせて、本研究の学術誌への論文投稿の際に必要となる追試のための費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Effect of oral administration of the IgE-suppressive wild yeast strain Saccharomyces paradoxus P01 on the development of atopic dermatitis-like symptoms in NCNga mice2015

    • 著者名/発表者名
      T. Kawahara, D. Nakayama, K. Tanaka, H. Yasui
    • 雑誌名

      Food Science and Technology Research

      巻: 21(2) ページ: 223-230

    • DOI

      10.3136/fstr.21.223

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inhibitory effect of a hot-water extract of leaves of Japanese big-leaf magnolia (Magnolia obovata) on rotavirus-induced diarrhea in mouse pups2014

    • 著者名/発表者名
      T. Kawahara, T. Tomono, Y. Hamauzu, K. Tanaka, H. Yasui
    • 雑誌名

      Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine

      巻: 365831 ページ: -

    • DOI

      10.1155/2014/365831

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Lactobacillus属乳酸菌の皮膚角化細胞ケモカイン抑制機構の解析2015

    • 著者名/発表者名
      河原岳志,杉山 京
    • 学会等名
      日本畜産学会 第119回大会
    • 発表場所
      宇都宮大学 峰キャンパス
    • 年月日
      2015-03-29
  • [学会発表] 酒造用野生酵母Saccharomyces cerevisiae S03株の NC/Nga系マウスにおけるアトピー性皮膚炎抑制作用2014

    • 著者名/発表者名
      河原岳志,渡辺毅哉,中山大地,保井久子
    • 学会等名
      日本農芸化学会創立90周年・中部支部創立60周年記念 第171回 例会
    • 発表場所
      名古屋大学シンポジオン
    • 年月日
      2014-10-11
  • [学会発表] Lactobacillus属乳酸菌の皮膚角化細胞TARC発現に対する抑制効果2014

    • 著者名/発表者名
      河原岳志,半澤七海
    • 学会等名
      日本酪農科学会 酪農科学シンポジウム
    • 発表場所
      昭和女子大学 グリーンホール
    • 年月日
      2014-09-12

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公開日: 2016-06-01  

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