近年、アニマルウェルフェアを客観的に評価する必要性が増している。本研究では、その正の側面の指標候補として、睡眠行動に着目した。まずは、ウシの行動観察を行うことから、その発現の実態を明らかにすることを目的とした。また、ウシの睡眠行動の発現に関わる遺伝、環境要因も調査した。 今年度は、岐阜大学で繋留飼育されている黒毛和種繁殖雌牛6頭を観察した。9月、11月、1月、3月の各月3日間、ウシの行動を動画として保存し、18時~6時における各ウシの睡眠行動を連続記録法により記録した。睡眠行動として先行研究で睡眠に関わるウシの姿勢とされた’静止’と’リラックス’を記録した。その結果、各姿勢の合計記録時間は、9月が11月、3月と比較して有意に減少し、1月は3月と比較して有意に減少していた。発現回数では各月間で有意な違いは確認されなかった。また、成長ホルモンに関する遺伝子の多型や飼育環境の温度などの環境要因との関係も見られなかった。以上のことから、ウシの睡眠行動の発現に、季節的な要因が影響することが明らかとなった。 一方、’静止’姿勢の記録のタイミングが少し分かりづらいことが課題として判明した。そこで、その姿勢がどの程度継続した場合、行動の記録を開始するか判断するために、10頭のウシを対象に夜間2時間において’静止’姿勢の開始時刻と終了時刻を連続記録法により記録した。’静止’姿勢の持続時間と回数について分析を行った結果、5秒以上その姿勢が継続した場合にその姿勢の記録を行うこととした。また、睡眠行動の記録の省力化のために動き識別装置を用いた計測方法についても別途検討し、次の研究課題として取り組むこととなった。
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