研究課題/領域番号 |
25850193
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研究機関 | 一般財団法人日本生物科学研究所 |
研究代表者 |
稲吉 勇仁 一般財団法人日本生物科学研究所, その他部局等, 研究員 (70597963)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 伝染性気管支炎ウイルス / 生ワクチン / リバースジェネティクス / コロナウイルス |
研究実績の概要 |
鶏伝染性気管支炎ウイルス(IBV)の高頻度の遺伝子変異により、その主要中和抗原であるSタンパク質は血清型多様性を示し、交差防御も乏しいことから単一のワクチンによる防御は困難である。現在の養鶏業界では、一羽の鶏に対して複数の血清型の異なるIBVワクチン接種に加え、様々な感染症に対するワクチン接種が行なわれていることから、IBVの血清型多様性ならびに鶏ワクチンの多価化に対応する次世代IBVワクチンの研究開発が必要である。本研究はIBVクローンウイルス作製技術を基盤として、次世代組換えIBVワクチンならびにIBVをウイルスベクターとする組換え多価鶏ウイルスワクチンの構築を目的としている。 平成27年度は、平成26年度に構築された組換えIBV作製技術を応用し、実用化に向けた検討を行った。近年、養鶏場で流行している遺伝子型のIBVをスクリーニングし、選別されたIBV野外株(平成26年度に使用した野外株とは異なる遺伝子型の株)の構造タンパク質遺伝子を用いて組換えIBVの作製を試みたところ、これまでと同様の作製方法では組換えIBVを作製することができなかった。このことから、再度、組換えIBVの作製方法を検討したところ、一部の領域の遺伝子を変えることで組換えIBVの作製に成功した。 平成26年度に行った、強毒株および弱毒株の全ゲノムシークエンス解析による遺伝子変異部位の探索から同定された、IBVの病原性関連遺伝子の候補因子について機能解析を行った。IBVクローンウイルス作製技術を用いて病原性関連遺伝子の同定を試みているが明確な結論には至っておらず、一つのウイルス由来の因子に限らず複数の因子が関与している可能性が推察された。今後、複数のウイルス因子をターゲットに解析を進める予定である。本研究は、病原性関連遺伝子の同定ならびにIBVの長期継代による弱毒化の機構解明に繋がり、今後のワクチン開発に重要な知見となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に構築された、IBVクローンを利用した組換えIBV作製技術を応用し、実用化へ向けての検討を行った。近年、養鶏場で流行している遺伝子型のIBV遺伝子を用いて組換えIBVの作製を行ったところ、これまでと同様の作製方法では組換えIBVを作製することができなかった。このことから、これまでの方法では、一部のIBVにしか適用できないことが示唆されたため、平成27年度は組換えIBV作製方法の再検討を行ったところ、一部の遺伝子を変異させることで組換えIBVを作製することに成功した。野外IBV流行株のスクリーニングと組換えIBV作製方法の再検討を行ったため、研究計画の進行に遅れを生じたが、これまでと異なる遺伝子型のIBVに対して当該技術の適用が可能となった。 一方、病原性関連遺伝子に関しては、未だ同定には至っていないが、病原性に関わる候補遺伝子の機能解析を進めている。これまでの報告から、病原性に関与する可能性の高いIBV遺伝子をターゲットに解析を行ったが、明確な結論に至らなかった。今後、他の遺伝子を含めた更なる検討が必要である。 組換え多価ウイルスワクチンの構築に関しては、GFP 等の蛍光タンパク質遺伝子あるいは鶏病原性ウイルスの中和抗原が挿入されたIBVベクターを構築中である。 以上を総合的に判断して、当初の予定に比べて遅れているが、順次解析は進んでいることから、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、昨年度に改良された遺伝子組換えIBV作製技術が、さらに他の遺伝子型のIBVに応用可能か検討するため、平成26、27年度に用いられた野外IBVと異なる遺伝子型のウイルス株を用いて、組換えIBVの作製が可能か検討する。これによって、国内で流行しているIBVの遺伝子型の大部分を網羅することができる。また、病原性関連遺伝子に関しては、引き続きIBVクローン作製技術を用いて病原性関連遺伝子の同定を行う。一方、組換え多価ウイルスワクチンの構築に関しては、GFP 等の蛍光タンパク質遺伝子あるいは鶏病原性ウイルスの中和抗原が挿入されたIBVベクターの構築が成功したら、順次、組換えIBVの性状解析を行い、多価ワクチンとしての有効性を検討する。
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