研究課題
若手研究(B)
本研究ではニワトリに悪性リンパ腫をひき起こすマレック病(MD)に対する新規ワクチンの開発を行う。現在、MDは弱毒生ワクチンによってほぼ制圧されているが、野外においてマレック病ウイルス(MDV)は病原性が増強する傾向にある。そのため、より効果の高い抗MDワクチンの開発をするため、既存のワクチンに比べ生体内での高い増殖率を持ち、さらに免疫抑制及び免疫応答の終結に機能するProgrammed death-1 (PD-1) とProgrammed death-ligand 1 (PD-L1) の結合を阻害させることにより、既存のワクチンより高い免疫誘導能を有するワクチン作製を目指す。今年度は、まず新規抗MDワクチン(組換えMDV)の作製を行った。組換えMDVの作製には、生体内での増殖を改善するため、MDV強毒株(RB1B株)に由来する感染性クローンを用いた。PD-1遺伝子細胞外領域をクローニングし、ウサギ免疫グロブリンの定常部と連結させ (PD-1-Ig)、En Passant Mutagenesis法によりRB1B株のmeq遺伝子と置換させた。meq遺伝子はMDVによる病態形成に必須であるため、meq遺伝子をノックアウトすることでMDVの病原性は損なわれる。得られたクローンのうち、PD-1-Ig遺伝子を持ち、meq遺伝子を持たないクローンをRFLP、PCR及び遺伝子解析により確認し、meq遺伝子とPD-1-Ig遺伝子を置換させた感染性クローン (RB1B/PD-1/ΔMeq)を複数得た。また、作製したRB1B/PD-1/ΔMeqを培養細胞に導入し、組換えウイルスとして再生させた。次いで、ワクチン効果検討に用いる強毒MDVの作製を行った。MDVの病原性はmeq遺伝子の多型と関連することが知られている。そこで、RB1B株感染性クローンのmeq遺伝子と既知の強毒MDV株のmeq遺伝子をEn Passant Mutagenesis法により置換させた感染性クローンを作製した。また、強毒組換えMDVクローンを培養細胞に導入し、Cre-lox/Pシステムによりベクター配列(pBeloBAC-11)を除いた組換えウイルスを再生させた。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画では、平成25年度に抗MD組換えワクチンの作製及びワクチン効果判定に用いる強毒MDVの作製を行い、平成25~26年度に組換えワクチンの性状解析、平成26年のワクチンの効果判定を実施する予定である。現在の進捗状況として、組換えワクチンの作製及強毒MDVの作製は、組換えウイルスの再生を含めてすでに終了しており、in vitroにおける組換えワクチンの性状解析について現在進めている。以上のように、当初計画と比べて概ね順調に進展していると考える。
今年度に作製した抗MD組換えワクチンのin vitroにおける性状を解析し、そのワクチン効果をin vivoにて検討を行う。まず、RB1B/PD-1/ΔMeqのin vitroにおける増殖能についてプラークアッセイにより検討し、in vivoについてはRB1B/PD-1/ΔMeq接種鶏から経時的に末梢血を採材し、既存のワクチンを接種した鶏群とreal-time PCR法によるウイルスゲノムの定量を行い比較する。次いで、RB1B/PD-1/ΔMeqの生体への安全性(臨床症状の観察)の確認を行い、さらに細胞性免疫誘導能についてサイトカインの発現をreal-time PCR法またはELISA法により定量し検討する。最後にワクチンの効果判定試験を、MD感受性鶏を用いた感染実験により、生存率および腫瘍形成率を既存のワクチン接種鶏群と比較することで検討する。通常ワクチン接種は1,000Uで行われるが、本研究では、より明確に効果判定を行うため、通常より少ないドーズで接種を行い、ワクチン効果を比較する。初生ヒナにRB1B/PD-1/ΔMeqまたは既存のワクチン株を接種し、3日後に強毒MDV感染性クローンを接種し、約2ヶ月間経過を観察し生存率を比較する。また、観察期間中に発症しなかったヒナについては、腹腔内に腫瘍の形成が認められるか観察する。
今年度は新規抗MD組換えワクチン(RB1B/PD-1/ΔMeq)の作製を行った。作製した組換えワクチンの性状解析を行うために必要な試薬(抗体)をすでに発注済みである。しかし、受注生産品であるため納期が次年度となり、その試薬代(約48万円)を次年度の使用とした。また、研究遂行のために必要で、3月に発注を行った試薬・消耗品類(約26万円)と合わせて、その総額を次年度の使用とした。次年度使用額のうち、約48万円については、研究遂行上必要な試薬(抗体3点)をすでに発注しているが、受注生産品で納期に時間がかかり次年度納品となることから、その支払いに使用する。残りについては研究遂行のため必要であり、3月に発注を行った試薬・消耗品類(約26万円)の支払いに使用する。
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