研究課題
本研究では、病原体媒介節足動物のゲノムに内在する微生物由来の水平伝播遺伝子断片を検出し、節足動物のゲノム進化における役割を検証することを目的としている。塩基の出現パターンを用いて、塩基配列の由来生物種を推定する一括学習型自己組織化マップ法(BLSOM)を用いて解析を行ってきた。昨年度まで、英国・サンガー研究所が公開しているツェツェバエ・ゲノムスキャホールド情報を解析対象としてきたが、2014年に米国・エール大学によって精度の高いゲノム情報が公開されたことから、新たに解析対象に加えた。その結果、全9,710コンティグ配列中の約3.8%が細菌由来のゲノムであると推測された。また、ツェツェバエゲノム内にその遺伝子断片が存在することが既に報告されているWolbachia属細菌の検出結果を塩基配列の相同性に基づくblast法と比較した。その結果、blast法で検出された全38断片のうち、36断片がBLSOM法でも検出された。一方で、20断片がBLSOM法でのみWolbachia属細菌由来と推定され、新規水平伝播遺伝子断片として検出した。Wolbachia属以外のAlphaproteobacteria門の細菌属として、Anaplasma属、Bartonella属、Ehrlichia属、Neorickettsia属、Rickettsia属の断片も検出された。また、ザンビアで野外採集したツェツェバエからゲノムDNAを抽出し、その保有細菌叢を解析した。その結果、一部のツェツェバエ個体でゲノムのBLSOM解析で水平遺伝子断片が検出されたAnaplasma属細菌を保有することが明らかとなった。これまで、Anaplasma属細菌のツェツエバエからの検出報告はほとんどない。ツェツエバエと微生物との共生過程を経て、一部の細菌由来ゲノムがツェツェバエに水平伝播した可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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