研究課題
Trypanosoma congolenseは、エピマスティゴート型虫体がツエツエバエの下咽頭に、血流型虫体が宿主血管の内皮細胞に接着する。本研究は、この細胞接着に関わる原虫分子を同定し、接着の分子メカニズムを解明することを目的とし、接着分子の分離と質量分析による同定を試みた。両ステージ虫体の細胞表面蛋白質をビオチン標識し、アビジンカラムを用いて分離した。これを電気泳動した後、各バンドに対して質量分析を実施した。血流型で分離された蛋白質は、VSG (variant surface glycoprotein)と考えられる未同定の蛋白質と、グライコソームへの局在が予想される解糖系の酵素群であり、接着分子の候補を絞り込むには至らなかった。一方、エピマスティゴート型では、解糖系酵素のほかにCESP (congolense epimastigote-specific protein)やMSP (major surface protease)といった機能未知の表面蛋白質が分離された。エピマスティゴート型虫体の接着分子は、虫体を界面活性剤や高塩濃度の緩衝液で段階的に処理することで精製できることが報告されていたが、研究期間中には再現することができなかった。一方、血流型虫体の接着分子は、シアル酸に親和性を持つことが知られていた。そこで、シアル酸に親和性を持つ原虫分子を、フェチュイン結合アガロースのカラムを用いて分離し、電気泳動したところ、濃縮された単一のバンドが得られた。その質量分析の結果、機能未知の原虫蛋白質が同定された。原虫と宿主・ベクターとの相互作用の分子レベルでの解明は、原虫の寄生戦略を理解する上で重要であり、今後も本研究で同定された蛋白質の機能解析を継続して実施していくとともに、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析の実施等も視野に入れ、研究を遂行していく予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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