研究課題/領域番号 |
25850197
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
岡田 只士 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特任研究員 (30623855)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トキソプラズマ原虫 / エグレス / dense granule protein |
研究概要 |
本研究はトキソプラズマ原虫の宿主寄生機構解明を目的とする。dense granule proteinは宿主細胞への寄生時に形成される寄生胞の内部へと分泌される一群のタンパク質で、原虫が生育する微細環境維持に関わる。言い換えれば、これらのタンパク質の機能解明は原虫の宿主寄生機構解明につながると言える。本研究では当教室で同定された新規dense granule protein(C2BP)に関して、C2BP遺伝子破壊株の表現型解析及び組換えC2BPタンパク質を用いた生化学的解析を行い、C2BPの機能解析を行った。 表現型解析を行ったところ、電子顕微鏡による微細構造観察、マウス感染による病原性評価、原虫の増殖速度などにおいて有意差を認めることはできなかった。 一方、①1つの寄生胞あたりに含まれる虫体の数を継時的に計測すると、親株では感染24時間以降も増加をし続けるが、C2BP遺伝子破壊株では増加が抑えられた。②寄生胞内部に虫体が1匹のみ観察される寄生胞の割合を継時的に計測すると、親株では感染24時間以降も低い割合(10%以下程度)で維持されるが、C2BP遺伝子破壊株では再度増加した。これらの表現型はC2BP遺伝子破壊株に組換えC2BPタンパク質を発現させることで相補できたことから、C2BP遺伝子破壊によりもたらされた表現型と結論された。また、宿主細胞より脱出(エグレス)した虫体の割合を比較したところ、C2BP遺伝子破壊株は有意に高かった。これらの結果より、C2BP遺伝子破壊株は親株と比して、エグレスの時期が早くなっており、エグレスした虫体が周りの細胞に再感染したため、上記①、②のような表現型が観察されたと結論付けた。これらの結果をまとめ、エグレス時期制御に関わるタンパク質として、この新規dense granule protein(C2BP)をGRA22と命名し、論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究おおむね順調に進展できていると判断する。 その理由は、①計画していたC2BP遺伝子破壊原虫の表現型解析実験の大半を終了することができた。②組換えC2BPタンパク質をもちいた生化学的解析に関しては、研究計画より若干遅れているものの、おおむね予定通りである。③これまでに得られた知見をまとめ、論文発表することができた。 上記①~③の理由により、本研究の達成度はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はおおむね順調に進展している。そのため、研究計画を大幅に変更する必要はないと判断されるが、これまでの研究で気づいた問題点を改善する必要がある。 これまで使用してきたC2BP遺伝子破壊株のバックグラウンドはRH株である。これは、取り扱いが容易く、広く世界中で用いられているトキソプラズマ原虫株であるが、マウスへの病原性が高い、細胞内でシストを形成し難いなどの特徴がある。今後、研究計画に沿って、マウス感染モデルを用いて病原性やシスト形成能などを解析していくためには、現在使用しているC2BP遺伝子破壊株では困難である。 異なるバックグラウンドのトキソプラズマ原虫株(Pru株)を用いて、新たにC2BP遺伝子破壊株を作製し、今後の実験に使用していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究推進の過程で使用中のC2BP遺伝子破壊株がマウスへの感染実験に適さないものであることが明らかとなってきた。そこで、マウスへの感染実験に適したトキソプラズマ原虫株をバックグラウンドに新たなC2BP遺伝子破壊株を樹立することにしたため、マウスへの感染実験など一部の実験が計画通り進行できなかった。 新たに樹立したC2BP遺伝子破壊株を使用し、次年度にマウスへの病原性や生体内でのシスト形成能などを解析することを予定している。
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