1.degenerate PCR法によるオートファジー関連遺伝子ATG13のフタトゲチマダニ相同遺伝子の単離を試みたが、単離には至らなかった。そこで、ATG3、ATG4、ATG8、ATG12のフタトゲチマダニ相同遺伝子(HlATG3、HlATG4、HlATG8、HlATG12)のそれぞれについて、栄養条件下でのRNAiを実施した。その結果、HlATG3ノックダウン雌ダニが産出した卵において発生異常が認められた。HlATG12ノックダウン雌ダニでは、その半数が飽血時に死亡し、生存した半数の雌ダニは産卵したものの、それらの卵は孵化に至らなかった。HlATG4およびHlATG8ノックダウン雌ダニについては、対照群と同様の表現型を示した。以上のことから、マダニの胚発生にはオートファジー関連遺伝子HlATG3およびHlATG12が重要な役割を果たすことが示唆された。オートファジーの阻害がマダニ胚の発生異常を誘導するという現象は、新たなマダニ制圧法開発のための重要な知見になると期待される。 2.ヒストン脱アセチル化酵素Sir2(silent information regulator 2)に相同な2つのフタトゲチマダニ遺伝子(HlSIRT5、HlSIRT7)のうち、HlSIRT7についてリアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を行った。HlSIRT7遺伝子は、雌ダニの中腸、卵巣、唾液腺において吸血後に発現上昇すること、脂肪体においては吸血前後で発現が変動しないことが明らかになった。 3.フタトゲチマダニAMPキナーゼ(HlAMPK)の組換えタンパク質を大腸菌発現系にて作製し、分子量約53kDaの可溶性タンパク質を得た。精製した組換えHlAMPKをマウスに免疫し、抗血清を作製中である。
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