研究課題
若手研究(B)
(1)レセプター指向性及びウイルス増殖能の解析サルから分離されたCDV CYN07-dV株をヒトSLAM発現Vero細胞へ1継代馴化後、プラッククローニングした。得られたヒトSLAM馴化株には、3つの変異パターン(R519S, D540G, P541S)が認められ、それら馴化株は、イヌとサルに加え、ヒトのSLAMとnectin4の両方とも効率良く使えるウイルスであった。また、サル分離株で得られた変異を、イヌ分離株に導入した場合、株により、ヒトSLAM利用能を獲得出来ない、もしくは本来のSLAMやnectin4利用能の低下が認められた。したがって、これら変異は、本来の性状を保持しつつ、さらにヒトSLAM利用能を獲得できる普遍的な変異でなく、ウイルス株により異なることが考えられた。興味深いことに、あるイヌ分離株では、サル分離株同様に、本来の性状を保持しつつ、さらにヒトSLAM利用能を獲得できた。(2)レセプター機能性の解析SLAMは、V領域とC2領域からなり、V領域がH蛋白質との結合を担う。予想通り、V領域がhSLAM、C2領域がmacSLAM由来のキメラSLAMはCDV H蛋白質の受容体として機能しなかったが、その逆のV領域がmacSLAM、C2領域がhSLAM由来のキメラSLAMは受容体として機能できた。hSLAMとmacSLAMのV領域の配列を比較したところ、2つのアミノ酸置換のみ認められた。hSLAMのV領域にmacSLAMの2つの変異(R28H、Y49H)を点変異導入したところ、両方の変異を導入した変異体でのみ、CDV H蛋白質の受容体として機能した。以上より、この2つのアミノ酸の違いが、ヒトとサルのCDVへの感受性の違いを決めていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
in vitroのウイルスのレセプター指向性解析及びレセプター機能性解析は、当初の計画以上進んでいる。in vivoのサル感染実験について、他のグループにより、イヌで強毒型の野生型CDV分離株のサル感染実験が報告された、それにより必要な情報が得られたため、実施は見合わせ、in vitroの解析に専念した。
(1)レセプター指向性及びウイルス増殖能の解析:野生型CDVイヌ分離株とサル分離株のヒトSLAM利用能獲得に関わる決定因子の違いをアミノ酸レベルで同定する。(2)レセプター機能性の解析:平成25年度で作製したSLAM変異体プラスミド及びヒトSLAM馴化株を用いて、CDVのヒトSLAMの利用のための宿主側の因子を同定する。(3)動物感染実験:サル分離株、野生型CDVイヌ分離株、MeVを用いて、フェレットで免疫獲得後の交叉感染実験を行い、液性免疫における、CDVとMeVの交叉防御について解析を行う。
サル感染実験解析サル感染実験の解析用試薬(消耗品)が使用しなかったことに起因すると考えられる。in vitro解析は、当初の計画以上に進んでいるため、その解析に必要な試薬の購入に用いる。
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J Virol.
巻: 87 ページ: 7170-7175
10.1128/JVI.03479-12.