研究実績の概要 |
昨年度の解析から、CDVサル分離株であるCYN07-dV株が、ヒトSLAMを利用するためには、SLAMやNectin4の受容体へのHタンパク質の相互作用領域にアミノ酸変異が必要であった(R519SもしくはD540GもしくはP541S)。しかし、これら変異をCDVイヌ分離株に変異導入しても、サル分離株と同様に、本来の性状を保持しつつ、さらにヒトSLAMを効率よく利用できなかった。したがって、イヌ分離株は有していない、サル分離株に独特の変異があると考えた。Hタンパク質のアミノ酸配列比較では、5ヶ所(S24F, E276V, Q392R, D435Y, I542F)にサル分離株に特徴的な変異が認められ、そのうち1箇所(I542F)は受容体相互作用領域であったため、その関与が強く考えられた。サル分離株でヒトSLAM利用に必要な3つの変異(R519SもしくはD540GもしくはP541S)とサル分離株の独特の変異I542Fをそれぞれイヌ分離株に変異導入解析したところ、サル分離株と同様に、本来の性状を保持しつつ、さらにヒトSLAMを効率よく利用できた。以上より、CDVが霊長類であるサルにおいて流行した時点で、ヒトSLAMの効率的な利用に必要な変異の一つを獲得したと考えられた。
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