研究課題/領域番号 |
25850206
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 正利 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (50646411)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オピオイド受容体 / 中枢神経 / 分布 / 種差 / 免疫組織化学染色 |
研究概要 |
平成25年度は、犬と猫の中枢神経におけるオピオイド受容体の分布を定性的に評価するために、免疫組織化学染色法を用いた研究を実施した。大脳、中脳、間脳、橋、延髄、脊髄におけるμオピオイド受容体の分布を評価したところ、いくつかの知見が得られた。 大脳では線条体において犬よりも猫で強陽性を示した。モルモットでは線条体の刺激により行動の変化が誘発されることが報告されており、オピオイドを投与した際の犬と猫における意識状態や行動の変化の種差に関与している可能性が考えられた。中脳では中脳水道灰白質において猫よりも犬で陽性を示した。中脳水道灰白質は疼痛の下降抑制系の中枢として鎮痛作用の発揮に大きな役割を果たすため、犬と猫におけるオピオイドの鎮痛作用の違いに関与することが考えられた。間脳では内側手綱核において犬猫ともに強陽性を示した。内側手綱核は疼痛の下降抑制系に関与する可能性が報告されているが、犬猫の種差には影響しない可部位であることが示唆される。橋では網様体や傍小脳脚核において猫よりも犬において強陽性を示した。ただし、これらの部位におけるオピオイド受容体の発現や機能に関する報告はなく、種差に果たす役割は不明である。延髄では前庭線維において猫よりも犬で強陽性を示した。前庭線維は嘔吐中枢と連絡するため、オピオイド投与時に犬のみ嘔吐が認められたことに関連があると考えられた。脊髄では犬で強陽性像が得られたが、猫では組織が確保できず検討していない。 犬では疼痛の伝達経路や鎮痛機構に関わる部位にオピオイド受容体の発現が認められたのに対し、猫では鎮痛機構に関わる部位の発現は犬ほど顕著ではなく、行動の変化に影響する部位にオピオイドの発現が認められた。犬と猫においてオピオイドの作用に種差が生じる要因として、中枢神経系のオピオイド受容体の分布の違いが影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳脊髄における犬と猫のオピオイド受容体の分布を免疫組織学的手法を用いて、定性的に比較する予定であったが、染色条件の検討や使用する抗体の選定が順調にいかなかったためと考えられる。また、犬と猫の脳脊髄の組織の確保が、当初の予定より遅れてしまったことも影響していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
犬と猫の脳脊髄におけるオピオイド受容体の分布について定性的に解析を行うために、必要十分な組織を確保して引き続き免疫組織化学染色による評価を行う。オピオイド受容体の犬と猫における相同性評価のために、オピオイド受容体のタンパクのアミノ酸は配列あるいは塩基配列を調べる予定でもあり、免疫組織化学染色による評価が難しい場合、in situ hybridizationを用いた評価を行うことも検討する。 オピオイド受容体の分布について定量的に解析を行うため、RT-PCRを用いた脳脊髄におけるオピオイド受容体のmRNA発現量を調べる。詳細な分布の評価は難しいため、大脳皮質、大脳基底核、間脳、中脳、小脳、橋、延髄、脊髄の領域に分けて評価を行う。 また、蛍光標識したオピオイド受容体に選択性の高いリガンドを用いてオピオイド受容体の分布や機能的な評価を行うことも検討している。
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