研究課題/領域番号 |
25850211
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
古家 優 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (30500706)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腫瘍抗原 / リンパ腫 / 犬 |
研究実績の概要 |
腫瘍抗原は癌細胞に特異的に発現するタンパク質であり、腫瘍診断マーカー、癌ワクチン、免疫療法、標的治療薬などの開発に必須の素材として注目されている。本研究は、cDNAファージライブラリーと患者血清を用いた免疫学的スクリーニング手法であるSEREX法によって、犬のB細胞型リンパ腫における新規の腫瘍抗原候補を同定するとともに、得られた抗原候補タンパク質を利用し、新たな診断法や治療法の開発を目指すことが目的である。 これまでの研究において、遺伝子ライブラリーとB細胞型リンパ腫の罹患犬の血清を用いた免疫学的スクリーニングを実施した結果、26種の抗原候補タンパク質をコードするファージクローンを単離することに成功している。 平成25年度の研究により、腫瘍抗原候補タンパク質を用いたプロテインアレイを実施したところ、犬のB細胞リンパ腫に罹患した犬の血清は単離したいずれかの抗原に17頭中13頭の割合(76%)で反応を示すことが明らかとなった。健常犬の血清はそれらの抗原に反応を示さなかったことから、腫瘍抗原として有用なタンパク質のリストを作成することができた。 平成26年度の研究によって、有用性が見込まれる抗原候補の組換えタンパク質を作製し、一部のものについては精製が完了している。それらを用いたELISAによる血中の抗体価を定量的に測定する系を立ち上げつつある。 今後、得られた腫瘍抗原候補タンパク質を用いた腫瘍診断マーカーキットの開発を行うとともに、組換えタンパク質を抗原とした細胞免疫療法についても臨床応用を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物細胞を用いた組換えタンパク質の作製を試みているが、分泌量が少なく、充分な量が得られていない。大腸菌を用いて作製を行う系に変更して実施中であるが、26種全ての腫瘍抗原候補を作製するのは困難なため、種類を限定して精製中である。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍抗原候補の組換えタンパク質を用いたELISA系を立ち上げるとともに、作製した組換えタンパク質を抗原とし、細胞性免疫の誘導が可能かどうか検討する。すなわち、末梢血単核球から分離・誘導した樹状細胞を抗原候補タンパク質で刺激し、細胞傷害性Tリンパ球の誘導が可能かどうかELISPOTアッセイを用いて評価する。 また、腫瘍抗原候補タンパク質に対するモノクロ―ナル抗体の作製を行い、リンパ腫細胞株を移植したマウスに投与することによって腫瘍縮小効果があるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は平成25年度の残額を含め、消耗品の購入に充てることとなったが、実際の使用額(約135万円)は平成26年度の配分額(70万円)よりも上回っており、平成27年度においてもその傾向が続くことが予測されるため、次年度に繰り越す形とした。
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次年度使用額の使用計画 |
実験には多数の消耗品が必要なため、当初購入を予定していたCO2インキュベーターは購入が困難な状況となっている。平成27年度は消耗品や実験動物の購入等によって経費を執行する計画である。
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