研究課題/領域番号 |
25850212
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊藤 大介 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (40508694)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 鼻粘膜 / 幹細胞 / 嗅神経鞘細胞 / 脊髄損傷 |
研究概要 |
本研究目的は、犬の自然発症した脊髄損傷症例へ鼻粘膜由来幹細胞ならびに嗅神経鞘細胞を同時に移植し、脊髄機能回復に関する有用性を検討することである。これらの計画の中で、平成25年度においては、1. 犬の嗅粘膜内における幹細胞の同定を病理組織学的ならびに細胞培養下で実施すること(実験1)、2. 脊髄損傷モデルマウスへの犬嗅粘膜由来嗅神経細胞ならびに幹細胞の移植による脊髄再生能の有用性について検討すること(実験2)を目的とした。実験1に関しては実験計画通り、学生実習後に安楽死処置された犬10頭から経鼻腔内視鏡を用いて嗅粘膜を採材した。採取したサンプルは病理組織学的検査ならびに細胞培養に供した。病理組織学的検査のため嗅粘膜は4%PFAに48時間浸漬し、その後、30%グルコースへ24時間浸漬した後、OCTコンパウンドにて凍結切片を作製した。免疫染色学的検索のため、嗅神経鞘細胞の同定のためにp75抗体、S100抗体ならびにGFAP抗体を標識し、幹細胞の同定のためにnestin, ダブルコルチン(DCX)抗体を実施した。細胞培養は酵素処理した粘膜をneuriglinならびにforskolin加DMEM培地にて21日培養した後、チャンバースライドへと継代し、同様の免疫染色を実施した。その結果、嗅粘膜組織において嗅神経鞘細胞ならびに幹細胞と考えられる組織像が得られた。また培養した細胞においても幹細胞を示唆する抗体発現が得られた。しかし4頭から採取した嗅粘膜細胞培養において感染が認められたため、追加実験を行う必要性が考えられた。したがって実験2に関しては実験1が終了した後に実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は他の理由で安楽死処置がとられた犬から嗅粘膜を採取し、病理組織検索ならびに初代培養を実施したが、当初予定した頭数の嗅粘膜から細胞培養することができなかった。その理由としてサンプルの感染が挙げられる。犬の場合、鼻腔には細菌が常在しており、安楽死処置がとられた段階で免疫力がなくなり、細菌が増殖する。したがって安楽死後すぐにサンプルを採取しないと消毒や滅菌を実施しても感染のコントロールが困難な場合がある。
|
今後の研究の推進方策 |
改善点として安楽死後、迅速に嗅粘膜組織を摘出することはもちろん、摘出前に器具の滅菌ならびに滅菌操作を徹底し、また鼻腔を抗生物質加生理食塩水で徹底的に洗浄することが挙げられる。また、同様の研究を行っているブリストル大学Dr. Grangerやアイオワ州立大学Prof. Jefferyに対策や今後の注意点について意見を交換し実験を推進する。 in vitroでの実験が終了した後、マウス脊髄損傷モデルを作製し、犬から採取した嗅粘膜由来幹細胞ならびに嗅神経鞘細胞を移植し、脊髄再生の効果を検討する。
|