研究課題
乳用牛は乾乳時に抗菌剤を投与することによって、泌乳期の難治性乳房炎の治療あるいは乾乳時の新規乳房内感染の予防を行っている。そのため、乾乳時処置において多量の抗菌剤が使用されており、薬剤耐性菌出現の観点から抗菌剤に替わる新規治療・予防技術の開発が求められている。我々は遺伝子組換えカイコ発現系で作出した牛顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(TGrbGM-CSF)の乳房内投与が泌乳期乳房炎に治療効果を示すことを報告したが、乾乳時処置の効果については未検討であった。本研究では、乾乳時における乳房炎乳房並びに健常乳房へのTGrbGM-CSF注入が、乳房炎治療あるいは予防効果を有する可能性について検証した。乳房炎罹患牛5頭(治療試験)ならびに健常牛4頭(予防試験)を用い、各供試牛の乳房内にTGrbGM-CSF(0.4mg/乳房)を注入した。乳汁検体は、乾乳後0日、分娩後0、7、14及び21日に採取し、CMT試験、体細胞数測定及び細菌学的検査を実施した。血液検体は、乾乳後0、1、2、3及び7日、分娩後0、7、14及び21日に採取し、一般および生化学的検査を実施した。得られた結果は、乾乳後0日と分娩後0、7、14及び21日について比較した。各供試牛において、TGrbGM-CSF注入後の臨床症状並びに血液指標に変化は見られなかった。治療試験では、TGrbGM-CSF注入後に原因菌であるCNS、SAG、OSが乳中から消失し、乳中菌数は乾乳時に比べ分娩後7、14、21日で低値となった。体細胞数も乾乳時に比べ分娩後0、7、14、21日と漸減した。予防試験では、分娩後の新規感染はなかった。以上から、乾乳時のTGrbGM-CSF乳房内投与は、乳房内感染菌の減少および新規感染の阻止に関連しており、乳房炎治療あるいは予防効果を有することが示唆され、新たな乳房炎防除技術となる可能性が考えられた。
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