研究概要 |
研究代表者はこれまでの研究から、 脱アミノ化酵素 APOBEC2 を欠損すると筋疾患および骨格筋重量の減少を引き起こすことを明らかにしている。その原因がオートファジーの異常に起因すると予想し、初年度(平成25年度)の研究計画は、オートファジーの亢進(あるいは抑制)が起こっているか確認することであった。すでに、APOBEC2 欠損マウスの骨格筋では、オートファジーマーカーである LC3 が活性化していることがわかっている。そこでまず、他のマーカータンパク質(p62, poly-Ub, PINK1, Parkin)および遺伝子(map1lc3b, gabarapl1, pink1, park2)の発現量を定量した結果、オートファジーが亢進している可能性が示唆された。APOBEC2 欠損マウス骨格筋の電顕写真から、異常なミトコンドリアが多く観察されたことから、ミトコンドリアマーカー(pdk4, ucp3)の遺伝子発現を定量すると、顕著な増加がみられた。一方で、mtDNA コピー数に増加はみられなかったことから、APOBEC2 欠損筋中のミトコンドリアで、何らかの異常が起こったと考えられる。また、ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)のマーカータンパク質 (PINK1, Parkin) の発現量が増加していたことから、APOBEC2 欠損により発生した異常ミトコンドリアを分解するために、マイトファジーが亢進した可能性が考えられる。近年、マイトファジーの破綻が、骨格筋量の減少に繫がることが明らかになっている (Lokireddy, Cell Metabol., 2012)。即ち、APOBEC2 欠損マウスでみられた骨格筋量の減少は、マイトファジーの異常が原因である可能性が考えられる。
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