研究課題
本年度の研究では、ゼブラフィッシュ胚における PI3K-p110b の結合分子に関して解析を行った。ゼブラフィッシュ胚はその発生の早さや透明度、操作性において胚発生の初期を研究する上で好適な実験動物である。本研究ではさらに研究を進めるため、前年度までの初期胚特異的な PI3K-p110b 結合タンパク質の解析に加え、既知の PI3K-p110b と複合体を形成する可能性の有る分子のcDNAをゼブラフィッシュ胚からクローニングした。これまでの所、7種類のインスリン受容体基質 (Insulin receptor substrate: IRS) のゼブラフィッシュホモログの存在を確認し、うち6種類のIRS分子に関して全翻訳配列をカバーするcDNAを単離する事に成功している。また、PI3KAP/XB130分子のゼブラフィッシュホモログに関しても全長をコードするcDNAを単離した。さらに、これらの分子に関しモルフォリノアンチセンスオリゴ (MO) を用いて発現阻害実験を行い、胚の正常発生率や生存率を調べた。IRSについては、胚の正常な成長に関与する事が示唆されているIRS-1分子や、主に生体組織の代謝や生殖機能の発達等に関与するIRS-2 分子に関して調べた。その結果、IRS-1 の発現阻害では、発生初期において生存率が低下する傾向が見られるがIRS-2 の発現阻害ではIRS-1ほど顕著な影響は見られない、という結果が得られた。このことからIRS-1とIRS-2はそれぞれに異なる役割を持つ事が示唆された。現在、低酸素をはじめとする代謝状態の変化が引き起こされる条件において、これらの分子が発生初期で果たす役割についても解析・検討を加えている。これらの成果は、ゼブラフィッシュ胚を用いてPI3K-p110b の働きを調べる場合に有用な知見となる事が期待される。
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http://endo.ar.a.u-tokyo.ac.jp