研究課題/領域番号 |
25850221
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 圭介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20612386)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 新規ホルモン / 摂食行動 / 自律神経機能調節 / ニューロメジンU / ニューロメジンS |
研究実績の概要 |
本研究は、新規ホルモンである、ニューロメジンU(NMU)及びニューロメジンS(NMS)関連ホルモン(それぞれNU1、NU2とする)の生理機能の解明を主たる目的とする。昨年度、NU1、NU2をラット側脳室へと投与し摂食量、体温への影響を検討したところ、明期におけるNU1、NU2の投与により摂食量が有意に増加することが示された。一方、暗期にNU1、NU2を脳室内投与したところ、体温の有意な上昇を誘起した。 そこで、本年度は、さらにNU2の投与が自発行動量、エネルギー消費量に及ぼす影響を調べた。その結果、明期においてNU2の側脳室内投与により自発行動量が増加した。しかし、暗期におけるNU2の投与は自発行動量に影響を及ぼさなかった。次に、NU2投与後のエネルギー消費量を測定したところ、NU2投与がエネルギー消費を増加させることが示された。さらに、恒暗条件下においてNU2の投与がラットの行動リズムに及ぼす影響を検討した。その結果、NU2の側脳室投与により、投与後の行動量のリズムの周期が長くなる可能性が示された。これらの結果は、NU1あるいはNU2が視床下部機能の調節に関与している可能性を示唆する。そこで本年度ではさらに、NU2投与後の視床下部における遺伝子発現をGeneChipにより網羅的に検索した。その結果、摂食制御関連遺伝子の発現に大きな変化は認められなかった。しかしながら、体温調節に関連する遺伝子のいくつかがNU2投与により増加することが示された。 NU1及びNU2は、NMU及びNMSと同一の前駆体から切り出される。しかし、昨年度の研究成果より、NU1及びNU2の生理作用は、NMU及びNMSのそれと必ずしも一致しないことが明らかになりつつある。やはり、本年度の研究成果においても、行動リズムに及ぼす影響が、NU2とNMSでは全く異なる可能性があることが示された。これらの成果は、新規ホルモンNU1とNU2の生理的役割を考察する上で、重要な知見となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画の目的のひとつに位置付けていた、行動量や自律神経機能(エネルギー消費量)の調節における新規ホルモンの作用について、計画通りにラットを用いた投与実験によって明らかにすることができた。 また、本年度の目標に挙げていたNU2の投与が行動リズムに及ぼす影響についても検討し、興味深い結果を得ることができた。 さらに、一部計画を修正し、昨年度から準備を進めていたNU2投与後の視床下部における遺伝子発現の網羅的な解析についても実施し、摂食制御関連遺伝子や体温調節に関連する遺伝子の発現変動についてデータを得ることができた。ただし、このNU2投与後の視床下部における遺伝子発現の解析については、詳細な検討ができていない部分もあるので、この点については今後実施する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載した通り、NU2投与後の視床下部における遺伝子発現の網羅的な解析を本年度実施した。その結果、発現に変動の見られた遺伝子に関して、今後、再現性なども含めて詳細な検討を行っていく。特に、体温調節に関連する遺伝子の解析を進め、体温調節作用の作用機序について、阻害剤等を用いた薬理学的なアプローチも含めながら検討していく予定である。 また、NU1及びNU2が体温調節に関与している可能性があることから、低温環境下あるいは高温環境下におけるNUの発現について調べる予定にしている。 加えて、研究計画に挙げていたNU1及びNU2発現ニューロンの脳内分布に関して、特異的抗体を入手し、免疫染色により検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究により、新規ホルモンNU1とNU2の摂食行動の制御、体温調節における生理作用について興味深い成果が得られた。そこで研究計画を更新して、本年度はNU2投与後の視床下部における遺伝子発現の網羅的な解析を行った。ただし、計画していた詳細な検討ができていない部分がある。そのため、主に分子生物学的実験用の試薬・消耗品として予定していた研究費を使用しなかった。また、本年度は脳室内投与などの薬理学的実験を中心に進めた。そのため予定していたよりも研究費を使用しなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
先述した研究推進方策及び繰越理由の通り、NU2投与後の視床下部における遺伝子発現の網羅的解析について本年度できなかった、発現に変動の見られた遺伝子に関する詳細な解析を行っていく。繰り越した分の研究費については、これらの検討のため分子生物学的実験用の試薬・消耗品として使用する。
|