本研究は、新規ホルモンである、ニューロメジンU(NMU)及びニューロメジンS(NMS)関連ホルモン(それぞれNU1、NU2とする)の生理機能の解明を主たる目的とする。これまでに、NU1、NU2をラット側脳室へと投与し摂食量、体温及びエネルギー消費量などへの影響を検討してきた。その結果、体温とエネルギー消費量の有意な上昇を認めた。そこで、NU2投与後の視床下部における遺伝子発現をGeneChip及びReal-time PCRにより網羅的に検索したところ、体温調節に関連するプロスタグランジンE合成酵素及びシクロオキシゲナーゼの遺伝子発現が増加することが示された。 そこで、本年度はNU1、NU2の体温上昇作用の機序を探るため、プロスタグランジン合成の阻害剤であるインドメタシンを前投与し、NU1、NU2の体温上昇作用に及ぼす影響を検討した。その結果、インドメタシンの前投与が、NU1、NU2の体温上昇作用を阻害することが明らかとなった。 次に、NUの体温調節作用を探る一助として、高温あるいは低温条件下におけるNUの発現変化を調べた。本項目では、ラットを一定時間、高温あるいは低温条件に暴露し、その後のラット脳をサンプリングして、RIA法によりNU1の含有量を測定することにした。その結果、低温暴露により中脳・脳幹部におけるNU1の含有量が、コントロール群のそれと比べて減少することが見出された。また、視床下部においてもNU1含有量が減少している傾向が認められた。一方、高温条件下においては顕著な変化は認められなかった。 以上の結果より、NMU/NMS関連ホルモンであるNU1及びNU2が体温調節に深く関与しており、プロスタグランジン経路を介して体温上昇に働く可能性が見出された。
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