研究課題/領域番号 |
25850222
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
白砂 孔明 自治医科大学, 医学部, 助教 (20552780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 妊娠 / 妊娠高血圧症候群 / 自然炎症 / インフラマソーム |
研究概要 |
妊娠は半異物である胎児を許容する自然免疫寛容である。それが破綻した場合に炎症反応による胎盤機能不全が誘発され妊娠高血圧症候群が発症すると考えられているが、実体は不明である。申請者は、無菌性疾患である本病態には胎児などの自己に反応する自然炎症が関与すると考え、「妊娠高血圧症候群は自己由来の危険シグナルで自然炎症を誘導する“インフラマソーム機構”が異常に活性化された場合に発症する」と仮説を立てた。本病態マウスを用い、(1)インフラマソーム活性化と炎症性細胞同定、(2)インフラマソーム制御による本病態の評価、(3)培養細胞でのインフラマソーム活性化機序を検証する。本病態の自然炎症の分子基盤を示し、炎症制御による治療法の開発と妊娠生理における自然炎症の理解に繋げる。 妊娠高血圧症候群の病態では、胎盤は慢性的な低酸素と炎症反応に暴露され、抗血管新生因子soluble fms-like tyrosine kinase 1(sFlt1)産生が増加し、大量に母体に流出することが原因と考えられている。これを模倣した動物モデルを作製するため、sFlt1の発現アデノウイルスベクター(Ad)を妊娠マウスに投与した。sFlt1 Adを妊娠中期に投与することで母体の血圧は増加し、胎盤炎症が惹起された。しかし、高濃度のsFlt1 Adの投与では母体が死亡する事例が散見され、投与量を下げると血圧変動が見られなくなったことから、sFlt1 Adを使用した動物モデルの作製は困難であると判断した。次に、Angiotensin IIを使用するモデルを検討した。妊娠中期のマウスにAngiotensin IIを含んだ浸透圧ポンプを埋め込むことで、母体の血圧増加、胎仔低体重および免疫細胞活性化が惹起される妊娠高血圧症候群モデルを確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画段階では、sFlt1アデノウイルスベクターを使用した妊娠高血圧症候群モデルで研究を進める予定であったが、今回作製したウイルスベクターの毒性を除去することが困難であった。そのため、Angiotensin IIによる妊娠高血圧症候群モデルの構築に切り替えた。動物モデルの構築に時間が掛かってしまったが、今後はこの構築したモデルで解析を推進する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Angiotensin II持続投与による妊娠高血圧症候群病態モデルを用いたインフラマソーム活性化の検証および免疫細胞動態・炎症関連因子の解析 本病態は胎盤だけではなく、母体の様々な組織でインフラマソーム活性化・炎症性細胞の異常な免疫応答が起きると予想している。第一段階では、どの臓器・細胞でインフラマソームが活性化するか、実質細胞と間質細胞のクロストークやそれを仲介する因子を解析する。対象各組織の遺伝子・蛋白質発現解析、免疫細胞動態を解析して本病態モデルのインフラマソームを検証し、「妊娠高血圧症候群においてインフラマソーム活性化を誘発する責任細胞・因子」を同定する。 インフラマソーム欠損マウス(全身性抑制制御)による妊娠高血圧症候群の病態評価 インフラマソーム制御による本病態に対する効果の検証として、各種インフラマソーム構成分子(NLRP3、ASC、CASP1)欠損マウス(全身性抑制制御)で本病態モデルを作製し、第一段階の項目を検討する。対象臓器での炎症反応やインフラマソームの活性化の解析、特定した免疫細胞動態、病態の重症度を評価し、本病態に対するインフラマソーム機構の重要性を明らかにする。
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