研究課題/領域番号 |
25850236
|
研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
南川 和則 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (60601151)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ナノバブル / レドックス化学 / 水田 / 土壌 / メタン / ヒ素 / 微生物動態 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、イネ栽培ポット条件におけるナノバブル水の潅漑によるメタン削減効果を検証するために、以下の2つの実験を行った。 ①メタン直接排出量の比較:イネの栽培(有と無)ならびに潅漑水の種類(酸素ナノバブル水と対照水)の2つを実験要因として、メタンの直接排出量、重金属の溶出量、およびメタン動態に関わる微生物現存量などを測定した。イネ栽培期間中の積算メタン直接排出量は、ナノバブル水の潅漑によって有意に減少した(対照比21%減)。また、排水に溶出した鉄、マンガン、ヒ素の量も、ナノバブル水の潅漑によって減少する傾向が確認できた。一方、微生物現存量については、深さ0~5cmのコンポジット土壌サンプルを解析に用いたため、メタン削減を説明する結果は得られなかった。以上の結果から、酸素ナノバブル水の潅漑によるメタン削減は、当初の仮説の通り、土壌の還元状態の発達を弱めたことが原因であると考えられた。したがって、ナノバブル水の潅漑は、落水管理を実施できない水稲栽培環境におけるメタン排出緩和策となる可能性をもつ。 ②酸化還元状態の微少スケール観測:酸素ナノバブル水の潅漑によるメタン削減効果のメカニズム(具体的には、バブルがどの深度まで届くか)を説明するために、①のポット実験と同様の設計の元、イネ無栽培条件において酸化還元電位とpHをマイクロセンサーを用いて観測することを試みた。しかし、ガラス製のセンサーの校正の際に破損等が生じたため、結果として湛水初期のpHデータ(1mm刻みで深さ50mmまで)が得られるに留まった。 今後の研究を進める上で、バブルの到達深度は重要な指標となるため、最終年度においても継続して微少スケール観測を行う計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①ポット実験については、当初の計画通り、実施することができた。加えて、予想したとおりの結果が観測された。一方、②微少スケール観測については、機器観測の準備・調整が不十分であり、予定していた観測を最後まで行うことができなかったため、当初設定した目的は達成できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
「ナノバブル水の潅漑によってバブルはどの深度まで到達するか?」は、今後の研究を進めていく上で、早期に解かれるべき重要な命題であると考える。当初、平成27年度(最終年度)における実施を計画していた「土壌の酸化能・還元能に関する化学量論的解析」については、上記命題への答えを使って詳細な実験設計(土壌採取深度の決定など)を行う予定であった。しかし、平成26年度の微少スケール観測において目的を達成できなかったため、研究全体の計画を一部変更して、この微少スケール観測を平成27年度にも実施することとした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度後半に計測機器の購入のため、10万円の前倒し支払請求を行った。その残額として、次年度使用額(1898円)が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、微小スケール観測のためのセンサー類ならびに消耗品を購入予定である。また、国際誌論文(投稿中)のオープンアクセス公表のために、一部予算を使用する予定である。
|