研究課題/領域番号 |
25850237
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
馬場 友希 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (70629055)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 景観構造 / 環境保全型農法 / 捕食者 / アシナガグモ属 / 地理情報システム / ユスリカ類 / 間接効果 / 胃内容分析 |
研究概要 |
本研究では、水田の重要な害虫天敵であるアシナガグモ属のクモを対象に、農地景観が餌資源を介して水田内の捕食者密度に与える間接的影響の解明を目的とする。1年目は、景観構造がクモ類の個体数および餌資源に与える影響を明らかにするための解析手法の確立を目標とした。 栃木県塩谷郡風見・風見山田地区における20箇所の慣行水田(10筆)・有機水田(10筆)を対象に、クモ類の個体数調査を行い、GISを用いて各調査地周辺の景観要素を抽出した後、各種生物個体数を目的変数、景観構造と農法を説明変数とする一般化線形モデルを構築し、景観構造がアシナガグモ属とその餌生物の個体数に与える影響を検討した。その結果、アシナガグモ属の個体数については周囲200mの森林面積と環境保全型農法が正の影響を及ぼし、一方、ユスリカについては周囲200mの森林面積が正の影響を及ぼすことが分かった。この景観構造-餌資源-捕食者の3要因の関係を明らかにするため、パス解析を行ったところ、周囲200mの森林面積がユスリカの個体数に正の影響を及ぼし、さらにユスリカ個体数がアシナガグモ個体数に正の影響を及ぼすという、周辺景観による餌資源を介した捕食者への間接効果が明らかにされた。これらの成果の一部を国際生態学会(INTECOL)と応用動物昆虫学会で発表した。 この他、アシナガグモ属がユスリカ類を捕食しているかどうかを確認するための、胃内容分析用のクモ類のサンプリング調査を実施した。また室内実験により、アシナガグモ属の胃内容物からユスリカ類のDNAを検出するのに適したプライマーセットの探索を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初予定していた農地の景観要素がアシナガグモ属と餌生物であるユスリカ類の個体数に与える影響の解析を実施し、さらに胃内容分析に用いるクモ類のサンプリングも実施できた。また次年度以降の実験準備として、クモの胃内容物からユスリカ類のDNAを検出するのに適したプライマーセットも探索できたので、研究は概ね順調に進展していると評価した。一方、適当な調査地を選定するために全国各地の水田を調査したり、採集により得られたアシナガグモ属の標本のソーティングに時間を要したため、クモのユスリカ類の捕食率の推定は遂行できなかった。しかし、胃内容分析用の標本はすでに収集済であり、分析に必要なプライマーセットも特定できたため、研究の進展上大きな問題はないと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
景観-ユスリカ類-アシナガグモ属の関係を明らかにする野外調査については、昨年度の調査データを参考に、適切なデータの採取時期、採集場所を絞り込み、この改善された調査方法を基に、より精度の高いデータを取得する。また昨年度は景観とクモ類の個体数の関係について解析を行ったが、胃内容分析に基づくユスリカ類の捕食率との関係について解析は行わなかったため、その解析に力を入れる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由として1) 室内実験による捕食率の推定を行わなかったため、薬品購入量が少なかったこと、2) 得られた昆虫の数が当初想定された量よりも少なかったため、ソーティングや種同定を外部業者に委託しなかった事が主な要因と考えられる。 クモ類のユスリカ捕食率推定のための分子実験費用として使用する。また、ユスリカ類のソーティングは大まかな分類に基づいているため、これらの細かい種同定を外部委託するための費用として使用する。
|