水田のイネ害虫の天敵であるアシナガグモ属のクモを対象に、圃場周辺の景観構造が捕食者の餌資源を増やし、それが圃場内の捕食者の密度増加に寄与するという仮説を検証した。栃木県塩谷町で得られた野外調査データを用いて、景観要因がクモ類の密度に与える影響を解析した結果、水田内のアシナガグモ類の個体数は周囲200mの森林から正の影響を受ける事が分かった。この個体数増加の仕組みとして、周囲の森林率の増加に伴う餌生物のユスリカ類の増加が関与することが示唆された。一方、アシナガグモ類によるユスリカ捕食率の増加は遺伝子マーカーを用いた捕食率の推定からは支持されなかった。今後、捕食率の評価法の改善が望まれる。
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