最終年度は調査ができていなかった北海道平取町、岩手県遠野市、愛媛県西予市において現地調査や行政担当者へのヒアリング調査及び資料集収集等を実施した。また、最終年度のため調査内容のとりまとめも行った。 本研究により、重要文化的景観は、1:残ってきた物の価値を最上に置く事例(一関本寺,田染荘など)、2:生活・生業の持続性を最上に置く事例(近江八幡,小鹿田焼など)、3:変化しながらも信仰・民俗的アイデンティティを保ってきた事例(沙流川流域,平戸島など)、4:諸要素が複合することで価値を生んでいる事例(四万十川流域など広域)、に大きく分けられることが分かった。 選定範囲は1に近いほど狭く、4に近づくほど広域にわたる。また、1に近づくほどモノに特化した既存の文化財調査の手法の延長線上にあり、調査が明瞭で価値付けや保存計画との整合性が高い傾向にあった。一方で、景観という広い面積を扱えるという利点は4に近づくほど認められるのも事実である。 価値調査は、諸学術分野にまたがる文化的景観らしく内容は多岐にわたるものが多かった。それゆえに、項目間のつながりや価値としての統合が難しいという側面も垣間見られた。 地域の変化については調査報告書では多少触れられているものの、変化の仕組みや変化の中にある変わらないものといった計画に結び付けられる視点ではおこなわれていなかった。保存計画においても変化について具体的に書かれておらず、今後の課題と言える。
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