研究課題/領域番号 |
25850243
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 将典 東京大学, 農学生命科学研究科, 特任助教 (20615273)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 植物ウイルス / 細胞死 |
研究概要 |
本年度は、以下の3項目を実施した。 1.ポテックスウイルス属ウイルスのHelタンパク質による細胞死に関する解析:タバコ属植物において細胞死を引き起こすポテックスウイルス属ウイルスについて、細胞死誘導の原因となるウイルスタンパク質の探索を行った。その結果、複製酵素に含まれるHelタンパク質が細胞死誘導活性を有することがわかった。さらに、Helタンパク質による細胞死は、ウイルス感染時の細胞死と同様に、活性酸素の生成を引き起こすことが明らかになった。 2.ポテックスウイルス属ウイルスのHelタンパク質による細胞死に関わる宿主因子:Helタンパク質による細胞死が植物の免疫反応である過敏感反応(HR)と類似した特徴を有することに着目し、細胞死誘導に関わる宿主因子について検討を行った。その結果、HRに必須なSGT1をサイレンシングした植物において、Helタンパク質による細胞死が抑制された。 3.コモウイルス属ウイルス接種系の構築:タバコ属植物に感染し細胞死を引き起こすコモウイルス属ウイルスについて、感染性cDNAクローンの構築を行った。作製したcDNAクローンの接種により、コモウイルス属ウイルスの病徴が再現された。また、各種ウイルスタンパク質の抗体を作製し、感染植物においてウイルスタンパク質の検出を行った。 以上の解析により、ポテックスウイルス属ウイルスによる細胞死の原因となるウイルスタンパク質を同定し、この細胞死が既知の免疫反応であるHRと類似した特徴を有することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ポテックスウイルス属ウイルスにおいて、細胞死誘導の原因となるウイルスタンパク質を同定し、さらにその細胞死誘導に関わる宿主因子を明らかにした。また、コモウイルス属ウイルスについては再現性の高い接種系の構築を行うことで、次年度以降の基盤構築を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
概ね計画通りに研究が進んでいるため、次年度も当初計画の通りに研究を推進する。具体的には、コモウイルス属ウイルスを用いて、細胞死誘導の原因となるウイルスタンパク質の探索を行い、細胞死誘導に必須な領域の特定を目指す。また、細胞死誘導に関わるシグナル伝達経路に関する解析を行う。さらに、細胞死の原因となるウイルスタンパク質について、植物細胞内における動態を共焦点レーザー顕微鏡などを用いて捉える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度に実施した項目のうち、ポテックスウイルス属ウイルスのHelタンパク質に関する解析では当初想定より順調に進んだ。一方で、コモウイルス属ウイルスを用いた解析では、再現性のよい接種系の構築・検討が必要となり、これを優先的に実施した。以上の2つの理由から、当初想定より主に物品費の支出が減った。 次年度は、コモウイルス属ウイルスで構築した接種系に基づき、免疫反応誘導に関わるウイルスタンパク質領域の探索ならびに機能領域の特定を進める計画であり、ここに先年度予算の残額を物品費として充てる予定である。その他は、当初計画どおりに進める予定である。
|