研究課題
本年度は、以下の3項目を実施した。1.コモウイルスHelタンパク質の細胞死誘導領域の特定:タバコ属植物において細胞死を引き起こすコモウイルスについて、Helタンパク質が細胞死を誘導することを見出した。また、およそ600アミノ酸からなるHelタンパク質のうち、両親媒性ヘリックスを含む74アミノ酸からなる領域(nHel領域)が、細胞死誘導活性に重要であることを明らかにした。さらに、nHelによる細胞死は複数のコモウイルスおよび近縁なウイルス属でも共通することを見出した。2.nHelによる細胞死誘導のシグナル伝達経路の解析:nHelによる細胞死の特徴を明らかにする目的で、植物の既知抵抗性反応である過敏感反応との比較を行った。その結果、nHelによる細胞死の誘導に伴って、活性酸素種の生成、防御応答遺伝子群の発現上昇等が観察された。また、過敏感反応のシグナル伝達に関わる宿主因子SGT1を機能抑制した植物では、nHelによる細胞死が抑制された。このことから、nHelによる細胞死は過敏感反応と類似した特徴を持つことが示唆された。3.nHelによる細胞死に関与する宿主側の反応:nHel領域について様々なアミノ酸変異を導入し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて植物細胞内での動態を調べたところ、当該領域が示す細胞死誘導活性は宿主膜を変性させる活性と相関することが示唆された。さらに、膜変性阻害剤であるセルレニンを処理することにより、nHelによる膜変性活性を抑制した場合に、細胞死誘導も抑制されることを明らかにした。以上の実験により、コモウイルスとその近縁なウイルスにおいて、nHel領域が共通して細胞死を誘導することを見出し、nHelによる細胞死が宿主細胞の膜変性と強く相関することを明らかにした。
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