研究課題
若手研究(B)
CaMKP-NのN末端領域にはグルタミン酸の連なった特徴的なクラスター配列(poly E配列)が存在する。CaMKP-Nはpoly(Lys)によって活性化され、可逆的な酸化修飾によって活性が負に制御されるが、poly E配列を含むCaMKP-NのN末端領域がpoly(Lys)による活性化において重要な役割を果たすことが明らかにされた。しかし、poly(Lys)は生体内に存在しておらず、CaMKP-Nの内在性の活性化因子や活性化機構については未だ不明な点が多い。そこで、大腸菌ツーハイブリッドシステムを用いてCaMKP-NのN末端と相互作用する因子の特定を試みた結果、protocadherin gamma subfamily C5 (Pcdhγ-C5)を含む様々な因子が同定された。Pcdhgc5はN末端側が細胞外に存在し、C末端側が細胞質に存在する膜貫通型タンパク質である。Pcdhγ-C5がpoly(Lys)と同様にCaMKP-Nによる脱リン酸化に影響するのかを調べるために、様々な基質を用いて脱リン酸化アッセイを行った。その結果、poly(Lys)と同様に、Pcdhgc5存在下ではタンパク質基質であるリン酸化CaMKIがより効率よくCaMKP-Nによって脱リン酸化された。また、細胞内でも同様にCaMKP-Nによる脱リン酸化に影響が見られるかどうかを調べる目的で、Neuro2a細胞にCaMKP-N、CaMKI、Pcdhγ-C5(715-944)を共発現させたところ、CaMKP-Nの単独発現に比べて、Pcdhγ-C5 (715-944)とCaMKP-Nを共発現させた場合では、リン酸化CaMKIが顕著に脱リン酸化された。以上の結果より、Pcdhγ-C5はCaMKP-Nの内在性のポジティブレギュレーターとして機能する可能性が強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
CaMKP-Nがプロテアソームによって限定分解され、活性化されるメカニズムの解明が本年度の課題であった。CaMKP-Nが直接ユビキチン化されているのか、それとも何らかのユビキチン化タンパク質にCaMKP-Nが結合し、「中途半端な形」でプロテアソームへと輸送され、限定分解にとどまっているという可能性について検討した。その結果、後者(ユビキチン化タンパク質に結合)であることが明らかとなったが、ターゲット分子の同定には至っていない。しかし、Pcdhgc5との結合によって活性化するという全く別のメカニズムを発見したので、概ね順調に進展していると言える。
CaMKP-Nに結合するユビキチン化タンパク質は、キレートプルダウンによって銀染色レベルで数本のバンドに絞られているので、今後質量分析により同定する。一方、CaMKP-Nの阻害剤のスクリーニングを行う。CaMKIVの発現量の低下によって糖毒性が引き起こされるとすると、ネガティブレギュレーターであるCaMKP-Nの活性を阻害してやれば、相対的にCaMKIVの質的改善(リン酸化型CaMKIVの増加)が見込まれる)。そこで26年度はCaMKP-Nに対する阻害剤をスクリーニングする。さらに、CaMKP-N阻害剤を用いた場合、リン酸化型CaMKIVが増加し、糖毒性時のインスリン分泌量の低下が改善されるか、INS-1細胞を用いて確かめる。
中途半端な額を無理矢理執行するよりも、次年度に繰り越して有効利用した方がよいと考えたため。26年度の研究計画に合わせて有効利用する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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