オートファジーによる糖鎖分解とそのリサイクル機構を明らかにするために、出芽酵母を異なる栄養条件下で培養し、解析を行った。出芽酵母を用いた解析により、次のことを明らかとした。 出芽酵母のマンノシド糖鎖の代謝分解を担うAms1酵素が栄養飢餓に応じて誘導されることを見出した。Ams1はTORC1及びProteinkinaseA経路の下流で転写レベルで発現制御されており、ストレス応答性転写因子Msn2/4によって転写されることが示唆された。また、オートファジーを介して液胞へ輸送されることにより、液胞内でPep4依存的なプロセシングを受け、翻訳後レベルでも活性化されることが明らかとなった。 また、酵母の無細胞抽出画分に存在する種々の糖分解活性を解析した。その結果、αマンノシド分解活性とαグルコシド分解活性は栄養飢餓時に活性が上昇するが、βグルコシド分解活性は誘導されないことが判った。 出芽酵母の液胞内の糖鎖分解機序を解明するために、まず液胞画分の単離を行った。単離条件は確立できたため、今後は単離した液胞画分中の糖鎖の定性的・定量的解析を行う計画である。 また、Ams1の活性制御に関わる新規因子の探索を行った。その結果、機能未知の細胞表層タンパク質の欠損株において、Ams1の栄養条件下における活性が著しく上昇したことから、Ams1の活性制御に関わることが示唆された。本遺伝子欠損株では、細胞が栄養飢餓状態にシフトしていたことから、細胞外栄養シグナル伝達に関与していることが示唆された。今後、詳細なメカニズムを解明していく。
|