研究課題/領域番号 |
25850247
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中南 健太郎 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40513403)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 低温馴化・脱馴化 / RNA制御 / 翻訳制御 |
研究実績の概要 |
越冬性の植物は,低温馴化機構により耐凍性を獲得することで越冬が可能となり,その後春になると獲得した耐凍性を脱馴化機構により解除することで生育を再開させることが知られている.植物の低温応答機構の解明は,農作物の生育範囲拡大と生育時期の改善につながる重要な研究である.本研究の目的は,低温により特異的に誘導される遺伝子の特殊な翻訳制御機構の解明を目指すもので,この制御とは遺伝子転写後直ちに翻訳されずにmRNAの状態で保存され,その後,常温に戻した時に翻訳が開始されるというものである. 低温処理(低温馴化)及び常温に戻した状態(脱馴化)のサンプルを用いて,網羅的なmRNAとタンパク質の比較解析を行ったところ,発現変動する遺伝子はその発現パターンから3つのグループに分かれることが判明した.1つ目のグループは低温処理によりmRNAが誘導され,同時にタンパク質が翻訳され,それらが低温馴化時に機能するもの,2つ目は脱馴化時にmRNAとタンパク質が発現し,脱馴化時の生長再開に機能するもの,3つ目はmRNAの発現が低温馴化時に見られるものの,タンパク質発現は同時期に起こらず,次の脱馴化時に翻訳されるグループであった.この3番目のグループにはリボゾームタンパク質をコードする遺伝子群が多く含まれおり,脱馴化に機能するタンパク質を合成する翻訳ユニットが, mRNAの発現を伴わない速やかな制御が必要であることが示唆された.これは,植物の低温ストレス応答において,通常とは異なるプログラムされた遺伝子とタンパク質の発現メカニズムが重要であることを示している.この結果は,Molecular & Cellular Proteomics に発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プルダウン法を用いた翻訳制御タンパク質の解析は現在進行中である.また前述の比較解析により得られた低温誘導される遺伝子群が特別な翻訳制御を受けているという新たな知見に関して,インパクトの高い雑誌に発表することができ,研究はおおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,当初の研究計画に変更無く,翻訳制御タンパク質の同定後は,その詳細な機能解析を中心に行う.また,ストレスグラニュルと呼ばれる翻訳制御複合体の構成タンパク質の一つにGFPタグを付け発現させた形質転換植物を作製したので,その形質転換植物を用いて,タンパク質-タンパク質相互作用を用いた解析により,結合する翻訳制御タンパク質の同定を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,ほぼ予定通りに研究費を使用したが,キャンペーン等で安価に購入できた消耗品があり,少額の残額が出た.残額は平成27年度の消耗品費用として使用する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,引き続き,植物の低温ストレス応答機構解明を目指して,翻訳制御タンパク質の単離・同定とその機能解析を行う予定である. そのため,研究費は主に,タンパク質-タンパク質相互作用を用いた単離・精製キット,タンパク質発現解析および試験管内転写・翻訳実験関連試薬等,タンパク質機能解析関連試薬等の消耗品で使用するとともに,研究成果発表のための旅費に使用する予定である.
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