2年目となる平成26年度は,アルコール酸化反応の触媒量の低減と,酸化的速度論的光学分割反応の不斉配位子の構造最適化について検討を行った. 触媒量の低減については,数種のアルコール基質を用いて詳細な条件の最適化を行った結果,アルコール基質の構造によって最適な触媒の組み合わせが異なるという興味深い知見を得た.すなわち,アルコール以外の配位性官能基を持たない基質については,CuOTfを銅触媒として用い、より高濃度で反応を行うことが有効であり,カルボニル基やアミノ基等の配位性官能基を持つ基質については,CuClを銅触媒として用い,より低濃度で反応を行うことが有効であることを明らかにした.以上の検討から決定した条件を用いて,基質適用性の検討を行った.その結果,ニトロキシルラジカル触媒が1から2 mol%,銅触媒が1から4 mol%というより少ない触媒量にて,室温,開放空気という温和な条件下,メントール等の嵩高い2級アルコールや糖由来のヘテロ原子リッチなアルコールを含む種々のアルコールが効率的に酸化され,高収率で対応するカルボニル化合物へと変換されることを見出した.本申請研究により,実用性の高いアルコール空気酸化反応を開発することが出来た. 不斉配位子の構造最適化については,様々な置換基を有する配位子を合成し,アルコールの酸化的速度論的光学分割反応の検討を行った.しかしながら,前年度を上回る光学収率を得るには至らなかった.
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