本研究は,化学合成したエチニルヘリセンオリゴマーを用いて異方的・規則的集合体を構築することで,ナノ・マイクロメートルオーダーの分子構造変化をセンチメートル・メートルオーダーのマクロ運動機能に結び付けること,このために生体のように小分子・巨大分子をボトムアップする方法論を開発することを目的としている.今年度は,昨年度に合成した新規化合物群の性質を調べ,その機能開発をすすめた. (1)昨年度,棒状液晶分子を末端に有するオリゴマーを合成し,有機溶媒中においてホモ二重ラセン-ランダムコイル間で可逆的に構造変化すること,サーモトロピック液晶性を有することを示した.本年度,円二色性,小角X線散乱,示差走査熱測定などを用い,二重ラセン液晶とランダムコイル液晶と考えられる二種類の液晶を形成することを示した.また,液晶中での分子状態について調べた.さらに,温度および蒸気によって,バルク中でホモ二重ラセン-ランダムコイル構造変化を起こし得ることがわかった.二重ラセン分子を異方的に整列させて構造変化を起こすことで運動機能を開発する本研究課題において,極めて有効な結果を得た.二重ラセン液晶-ランダムコイル液晶間の可逆的構造変化を行うために,現在,異なる液晶末端を有する化合物を合成している. (2)昨年度,トリエチレングリコール部を末端に有するオリゴマーを合成し,種々の有機溶媒中で二重ラセン-ランダムコイル構造変化を行うことを示した.今年度は水系溶媒中での会合挙動を調べ,加熱により解離・冷却により会合する一般的な二分子会合の熱応答とは逆の挙動を示すこと,即ち加熱により会合・冷却により会解離することを見出した.このような熱応答を示す二分子会合体の報告例は極めて少なく,学術的に意義がある.加えて,この化合物の自己組織化と熱応答についても調べた.現在,これを異方的に集合化するために,LB膜形成を検討している.
|