研究概要 |
セリン側鎖水酸基置換反応の開発に関しては基質の合成に成功し,現在触媒,反応溶媒,反応温度等最適条件の検討を行っている。 生理活性物質等として研究対象とされるペプチドが内在的に有する酵素分解性や凝集性といった問題を解決するため,新しいペプチドイソスターとしてオキサザボロリジンの設計と合成を行った。また,合成したペプチドイソスターを評価するため,CXCR4リガンドである環状ペンタペプチドFC131に本骨格を導入したもの(B-FC131)を合成した。アミノメチルボロン酸エステルを合成し,ペプチド固相合成法により得られた4残基の保護ペプチドと縮合することで5残基のペプチドイソスター保護体とした。最後にアミノ酸側鎖及びボロン酸エステルの脱保護を行い,HPLCにより精製することで目的のB-FC131を合成した。 得られたB-FC131はESI-MSにより解析を行った。主要なMSピークとして371.8, 742.6, 760.6, 778.6, 892.7が得られた。742.6のMSピークは環状B-FC131に対応するものと考えられ,このことから,ボロン酸の脱保護を行うことでN末端セリンとの分子内の脱水縮合環化まで自動的に進行し得ることが分かった。予想される生成物として環化体(化合物A)の他に一水和体(化合物B),二水和体(化合物C)が考えられ,上記ピークは[A+2H], [A+H], [B+H], [C+H], [C+TFA+H]にそれぞれ帰属される。即ち,ESI-MS条件においてB-FC131は上記A, B, Cの平衡混合物であると考えられる。また,HPLC分析の結果からB-FC131はFC131と同様の親水性を有しており,このような基本的物性変化を抑えてイソスター化可能であることを示唆している。
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