研究課題
若手研究(B)
筆者は、本年度から、Lewis塩基―塩化ケイ素複合体を反応性分子素子とする連続型分子骨格法の開発に関する研究を開始した。1年目にあたる本年度は、ホスフィンオキシド触媒にいくつかの塩化ケイ素試薬を組み合わせることで、新たな連続型反応を開発することに成功した。筆者は、ホスフィンオキシド-四塩化ケイ素複合体が、鎖状ケトンの連続的な不斉アルドール反応を高立体選択的に促進することを明らかにした。従来型は、同一のカルボニルα位で2度起こる連続反応であったのに対し、新たに開発した反応はカルボニルの両端でそれぞれ1度ずつアルドール反応が起こる。さらに、本反応を活用することで、C2対称性化合物エリカノンの合成をわずか6工程で達成した。現在、収率および選択性の改善を目指し、検討を継続している段階である。さらに、以前に開発した不斉Baylis-Hillman反応の活性化機構を利用することで、アルデヒド間のハロアルドール反応が進行することを新たに見いだした。本反応の活性化には、ホスフィンオキシド-トリクロロシリルトリフラート複合体が有効であり、目的物を化学収率91%、不斉収率76%でハロアルドール体を得ることに成功している。本反応で得られる生成物は、様々な官能基および第四級不斉中心を併せ持つため、有機合成において有効な合成中間体となると考えている。有用性を高めるためには立体選択性の改善が必要不可欠であり、触媒ならびに条件検討の精査を行っている。以上、これら結果は、Lewis塩基―塩化ケイ素複合体を利用した特有の反応であり、これら反応開発を通じて、高配位ケイ素複合体の有用性を実証することができている。次年度以降、これらの反応を有機合成に利用可能なレベルまで発展させるとともに、生成物を利用した分子骨格構築を行っていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度、2つの不斉反応を開発し、Lewis塩基―塩化ケイ素複合体を反応性分子素子とする反応開発の端緒を得ることに成功するとともに、既に、それを活用した天然物合成ならびに骨格構築法の開発に着手することができているため。
本研究は計画通りに推移していることから、平成26年度も引き続き、研究実施計画に従い、研究を実施する。
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