研究課題/領域番号 |
25860012
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
小林 豊晴 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (40570883)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成化学 / 有機化学 / 海洋天然物 / 三環性ポリケチド / インドキサマイシンF |
研究実績の概要 |
今年度も引き続き、インドキサマイシンFの三環性骨格部位の効率的構築法の開発を行った。まず前年度確立した合成経路を基に問題点を改善しつつ、AB環部に相当する二環性化合物の立体選択的合成を行った。すなわち、(-)-カルボンを出発物質とし、酸素選択的なアリル化、立体選択的なクライゼン転位反応と続く閉環メタセシス反応を鍵反応とした8工程の変換により二環性化合物を合成した。続いて第一級水酸基をカルボン酸に酸化する過程において、前年度確立した方法では再現性が取れないといった問題点が生じたため、酸化方法について再検討を行った。その結果、スワン酸化により一度アルデヒドとした後、ピニック酸化を行うことで、再現性よくカルボン酸へと導くことが出来た。その後、メチルエステルへの変換と立体選択的なメチル基導入により、AB環部に相当する二環性化合物を合成した。次いで得られた化合物に対して、ヘミアセタール環の形成による三環性骨格部位の構築を目指した。まずケトン部位の官能基および立体選択的な還元について検討したが、エステル部位が先に還元された化合物が得られた。これは、ケトン近傍に存在するアセトニドの立体的かさ高さに起因するものと考えた。そこで、アセトニドをTES基へと変換した後、還元反応を行った結果、望むヘミアセタール環化が進行し、インドキサマイシンFの三環性骨格部位に相当する三環性化合物を合成することに成功した。現在得られた三環性化合物からインドキサマイシンFの全合成を目指し、側鎖部位の立体選択的導入について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでにインドキサマイシンFの三環性骨格部位に相当する化合物の立体選択的合成に成功したが、平成26年度中の達成目標であったインドキサマイシンFの全合成は達成出来ていないため、やや遅れていると判断した。これは、平成25年度中に行ったAB環部の合成において再現性に問題点が生じたことや、当初計画していたテトラヒドロフラン環部の構築法では三環性骨格部位が構築できず、他の合成経路について検討したことが原因としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに合成したインドキサマイシンFの三環性骨格部位に相当する化合物のテトラヒドロフラン環およびシクロへキサン環上に望む置換基を導入し、インドキサマイシンFの全合成を達成する予定である。すなわち、ヘミアセタール部位をメチルアセタールへと変換後、ルイス酸および側鎖に対応するグリニャール試薬を作用させることで、テトラヒドロフラン環上に置換基を導入する予定である。この時コンベックス面からグリニャール試薬が接近することで、望む立体化学で置換基を導入できるものと考えている。シクロへキサン環上の置換基に関しては、第二級水酸基をケトンへと変換後、ケトンα位へビニルおよびメチル基を順次導入した後、ビニル基に対してアクリル酸エステルを用いたクロスメタセシス反応を行うことで立体選択的に導入することが出来るものと考えている。最後にエキソメチレン部位の構築、ケトンの立体選択的還元とエステル部位の加水分解を行うことでインドキサマイシンFの不斉全合成を達成する予定である。また全合成を達成後、インドキサマイシンFおよび合成中間体の生物活性試験を行いたいと考えている。
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