前年度までにクライゼン転位反応を鍵反応とするインドキサマイシンFの三環性骨格に相当する化合物の立体選択的合成に成功した。今年度はその三環性化合物に対して、テトラヒドロフラン環上の側鎖部構築について検討を行った。側鎖部位は、テトラヒドロフラン環に相当するヘミアセタール部位をオキソニウムイオンとした後、側鎖に対応するグリニャール試薬を作用させることで、コンベックス面からグリニャール試薬が接近し望む立体化学で置換基を導入できると考えた。はじめにヘミアセタール化合物に対して、直接側鎖に対応するグリニャール試薬を加えたが、側鎖を導入することはできなかった。次いで、ヘミアセタール部位を一度アセチル化した後、ルイス酸を添加することでオキソニウムイオンを発生させ、側鎖に相当するGrignard試薬を加えたが、側鎖を導入することは出来なかった。またアセチル体に対して、側鎖部位へ変換可能なニトリル基の導入を、ジエチルアルミニウムシアニドを用いて検討したが、目的のニトリル体を得ることは出来なかった。そこで現在は、シクロへキサン上のジオール部位の保護基の変更やヘミアセタール部位をメチルアセタールへと変換した後、オキソニウムイオンを経由する側鎖部位の導入について検討している。テトラヒドロフラン環上の側鎖部が構築できれば、シクロへキサン環の官能基変換を行っていく予定である。すなわち第二級アルコールをケトンへと変換後、ケトンα位へビニルおよびメチル基を順次導入した後、ビニル基に対してアクリル酸エステルを用いたクロスメタセシス反応を行うことで、立体選択的にシクロへキサン環上の置換基を導入できるものと考えている。最後にエキソメチレン部位の構築、ケトンの立体選択的還元とエステル部位の加水分解を行うことでインドキサマイシンFの不斉全合成を達成する予定である。
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