研究課題/領域番号 |
25860024
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
村上 博哉 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (40515128)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DNA損傷体 / LC-MS / 網羅的 / CE-MS / ガン |
研究概要 |
本申請課題の平成25年度における研究成果としては,まずDNA損傷体を選択的に捕捉可能な前処理手法の最適化を行った,その結果,洗浄溶媒の最適化を行うことによって,未損傷体を除去し,acetaldehyde由来の二種類のDNA損傷体を選択的に回収する処理条件の最適化を行い,本研究成果をanalytical scienceに投稿し,アクセプトされている. またエレクトロスプレーイオン化(ESI)において,DNA損傷体を高効率にイオン化をするための条件探索を行った.具体的には,溶離液の有機溶媒組成およびそれに加える添加剤の最適化を行った.その結果,溶離液の条件としては,やはり有機溶媒組成が高ければ,効率的にイオン化することは予想通りであったが,LC-ESI-MS/MSにおいて一般的に用いられる添加剤に関しては,添加剤の種類によって4~5倍程度の強度の差があることが明らかとなった.現在,他社(本研究成果はAB SCIEX社のイオン源でもの)のイオン源でも同様の結果が得られるか検討を行っている. このESI-MSのイオン化を高効率化させる溶離液条件でも,nucleosideにおいてある程度の分離能があることが知られている,HILICカラムに注目し,DNA損傷体の分離能などに関して検討を行った.前処理により大過剰に存在する未損傷体が除去できているため,逆相カラムと比較して未損傷体とDNA損傷体間で大きな保持時間に差がないHILICカラムでも,イオン化抑制をうけることなく,DNA損傷体の検出・定量ができることが現在までの検討で明らかとなっている.これらの確立した手法を用いて,ALDH2ノックアウトマウスから採取した各種臓器中DNAにおけるDNA損傷体分析を行ったところ,acetaldehyde由来のDNA損傷体の検出に成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度における研究成果は,LC-MS/MSを用いてどこまで感度上昇を行うことが可能かというところに重点課題とし研究を遂行し,その結果としてマウス中臓器からのDNA損傷体定量をも可能にする一連の分析システムの構築に成功している.こちらに関しては,一連の定量手法のプロトタイプが確立できたが,現時点ではpost column infusion法などを用いて,全保持時間においてイオン化抑制が起こりえないか,その確認作業が必要であり,本システムの頑健性に関する研究まで行うことができなかった. また,DNA抽出法およびnucleotideの選択的な捕捉に関しては,上述の高感度システムの構築に関して重きを置いたため,研究計画内容を完全には完遂することができなかった.しかし,チタニアを用いたnucleotideやDNAの抽出のための自作の前処理チップであるStop and go extraction tip (StageTip)を作製し,チタニア量の最適化および抽出溶媒組成および量などの最適化に関しては検討をおこなっており,高回収率での前処理が可能な条件のいくつかを見出している.平成26年度はじめには,この部分を完全な手法として確立し,応用を進めていく予定である. また岐阜薬大の江坂准教授との共同で検討を行っているキャピラリー電気泳動を用いた手法開発に関しては,CE部分における高効率でのオンライン濃縮に関する研究に関して良好な結果が江坂准教授のグループより報告されている.平成25年度は完遂できなかったが,これらのCEシステムとMS装置との接続を平成26年度は行っていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
まず現在までの研究により確立したLC-MSでの分析システムの頑健性に関して詳細な検討を行い,本格的な実分析を開始する予定である.具体的には,分析対象物として,ALDH2ノックアウトマウスの各種臓器中のDNA損傷体量の定量を行う予定である.本検体は,国立がんセンター東病院の金子教授との共同研究にて研究を行う予定であり,平成26年度の早い段階において試料を提供して頂ける予定である.本分析結果に関しては,金子教授と共にその定量結果を評価し,有意なデータを得ることができれば,ヒトの病理切片中のDNA損傷体などの分析にも展開できればと考えている. これらの実試料の定量分析と並行して,DNA抽出および酵素差別化されたDNA損傷体のnucleotideの分離・前処理条件の最適化を行っていく予定である.特に,酵素差別化されたDNA損傷体のnucleotideの前処理に関して,チタニアを前処理媒体としての利用することは,非常に有用であることが現在までの検討において明らかとなっている.そのため,今後は意図的にDNA中に各種DNA損傷体を形成させ,酵素処理からの一連の作業におけるDNA損傷体の条件の最適化を行い,高回収率でのDNA損傷体定量法の確立を目指す.これらの作業が完成すれば,上述の我々が確立した前処理・分析システムの網羅性をさらに拡張することが可能となり,よりガンとDNA損傷体の関連性を明らかにする技術基盤を確立する予定である. これらLC-MSを用いたDNA損傷体分析用の基盤技術と並行して,CE-MSを用いた分析システムの構築も検討を進める予定である.特にCEとMSの接続に関して市販のもではなく,自作でのシステムを構築し,既存法よりも高感度化を目指す予定である.
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