平成26年度における研究成果としては,まずDNA付加体の2’-deoxynucleotide体の選択的捕捉法の確立を行った.この手法には,前年度にDNA付加体の2’-deoxynucleoside体を選択的に捕捉可能な前処理デバイスの固定相担体を変更し,2’-deoxynucleotideの選択的捕捉が可能なチップ型固定相の作製および条件の最適化を行った.その結果,固定相担体および抽出溶媒,および抽出方法を最適化することで,高回収率にて2’-deoxynucleotide体を回収可能であるその一方で,2’-deoxynucleosideを除去することが可能なシステムの構築に成功した. これらの前処理手法と並行して,平成25年度より継続し,ESIのイオン化効率改善を目的とした溶離液の最適化をさらに進めた.分離系にhydrophilic interaction chromatography(HILIC)を採用し,高有機溶媒組成条件下における分離と溶離液に加える添加剤の最適化を行った.モデル化合物として用いたacetaldehyde由来のDNA付加体に関して条件の最適化を行った結果,イオン化効率を約1桁上昇させることに成功した.この確立したシステムを用いることで,臓器中のDNA付加体の定量分析が可能であることが明らかとなった. また2’-deoxynucleotideを対象とする分析では,CE-MSを用いた分析が非常に有効であるが,2’-deoxynucleotideは,陰イオン性物質であることからESI-MSのイオン化効率の低さが問題点であった.これを改善するために,錯体化などを駆使することによって,2’-deoxynucleotideを陽イオン化することに成功し,通常のnegative modeでの測定と比較して,1桁以上の感度上昇を達成した.
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