研究課題/領域番号 |
25860025
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
笹井 泰志 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60336633)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオコンジュゲート / バイオセンサー / 水晶振動子マイクロバランス / 生体分子固定化法 |
研究概要 |
抗体をバイオセンサーのトランスデューサー表面に固定化した抗体センサーの高感度化の方法の一つとして、固定化された抗体の利用効率を高めることが有効である。本研究では、特に、金を利用した抗体センサーにおける抗体の利用効率と分子認識の向上を目的に、抗体-高分子コンジュゲートの利用の可能性とその有用性について検討した。抗体コンジュゲートの合成に用いる高分子としては、生体適合性高分子として実績のあるビニルメチルエーテル-マレイン酸共重合体(VEMAC)について検討した。 平成25年度は、まず、モデルタンパク質にトリプシンを用い、VEMACとのコンジュゲート形成によるタンパク質の熱安定性と基質認識能への影響について評価した。その結果、VEMACによる修飾はタンパク質の熱安定性を顕著に改善し、親水性スペーサーを用いたコンジュゲート合成により、高分子基質に対しても高い分子認識能を示すことを明らかにした。 また、抗体コンジュゲートの水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーへの適用を目指し、QCMの金電極表面を修飾するためのチオール基を導入したVEMAC(VEMAC-SH)の合成を行った。チオール基導入率の異なるVEMAC-SHを合成し、QCM金電極の修飾について検討した。金電極表面へのVEMAC導入は、X線光電子分光スペクトル(XPS)測定で確認し、最適なVEMAC-SHを用いて修飾したQCM金電極表面では、タンパク質の非特異的吸着が効果的に抑制されることを明らかにした。 以上の結果は、QCM金電極表面へのVEMAC導入は、生体試料の非特異的吸着を抑制し、かつ、VEMACの残存カルボキシル基に抗体を結合させることで、熱安定に優れ、かつ、高い分子認識能の有する抗体分子の導入に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VEMACによる修飾がタンパク質の熱安定改善に効果的であることを確認することができた。また、タンパク質の分子認識能への影響を最小限にするコンジュゲート合成方法を確立した。計画通り、QCM金電極表面を修飾するためのVEMAC修飾剤の合成し、本修飾剤を用いた効果として、QCM金電極表面へのタンパク質成分の非特異的吸着が効果的に抑制されることを明らかにした。VEMAC修飾QCM金電極へ抗CRP(C-reactive protein)抗体を結合させ、金電極表面における抗体コンジュゲート作製と本センサーチップを用いたCRPに対するQCM分析系の構築も予定通り進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
VEMAC修飾QCM金電極に抗CRP(C-reactive protein)抗体を導入し、抗体-VEMACコンジュゲートの利用による高感度CRP検出系の構築を行う。金電極表面における抗体-VEMACコンジュゲートの物理化学的特性の評価は、X線光電子分光法(XPS)、分光エリプソメトリー、レーザーラマン分光を利用する。また、抗体固定化量は、QCMにおける振動周波数の変化から評価する。これらの結果を総合的に解析し、QCM金電極表面のコンジュゲートの最適化を行う。 別途、金ナノコロイド粒子表面への抗体-VEMACコンジュゲート導入にる簡便なCRP検出系の設計を行う。金ナノコロイド溶液では、コロイド粒子が凝集するとプラズモン共鳴に伴う520nの吸収波長が高波長側にシフトし、視覚的に確認が可能である。そこで、金ナノコロイド粒子を抗CRP-VEMACコンジュゲートで修飾し、抗体によるCRPの捕捉に伴う金ナノコロイド粒子の凝集を惹起することによるCRP検出が可能と考えている。本CRP検出に適した金ナノ粒子表面への最適な抗体-VEMACコンジュゲート導入について検討を行う。 上記の検討を基に、バイオセンサーを利用した生体試料中の基質分子の高感度検出における抗体-VEMACコンジュゲート利用の汎用性と有用性を検証する。
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