研究課題/領域番号 |
25860029
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
堀口 道子 東京理科大学, 薬学部, 助教 (70632470)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺胞再生治療 / 再生医療 / COPD / レチノイド / 吸入製剤 / DDS |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界の死亡原因の第4位であるが、破壊された肺胞を修復する有効な根治的治療法は未だ存在していない。 申請者は、COPDの根治的治療法の確立を目指して、破壊された肺胞の再生を作用点とする新規化合物の探索を行った。その結果、世界で初めて合成レチノイドAm80がヒト肺胞上皮幹細胞を効率的に分化誘導し肺胞再生効果を有するという新規の知見を発見した。しかしながら、Am80がどのような分子機構によってヒト肺胞上皮幹細胞の分化を誘導するか十分な検討は出来ておらず、有効性を高める為の作用点の同定が急務であった。そこで、本研究では、Am80の肺胞再生効果の増大や副作用を予測するために分子機構の解明を行った。 また、既に臨床で白血病の治療薬に使用されているAm80経口製剤では、レチノイン酸症候群などの全身性の副作用が報告されており、副作用の問題がない投与量では肺局所における有効治療濃度に達しないことが推定される。申請者の研究グループは、既に新規経肺投与用乾燥粉末吸入システム(72カ国で特許登録済み(2008))を開発し、タンパク質やペプチド等の生体高分子の経肺製剤を開発してきた。 そこで、本研究では、肺胞再生を目指した新規慢性閉塞性肺疾患の治療薬として、肺胞幹細胞指向型Am80経肺システムを構築しCOPD治療効果を評価することで革新的なCOPD根治的治療法を構築した。具体的には、マイクロアレイ解析を用いて、Am80の肺胞再生分子機構を明らかにし、責任分子と下流のシグナル経路の解明に成功した。さらに、吸入剤の構築に関しては、肺胞への送達効率が40%を超える非常に優れた肺内分布を示す吸入剤の作成に成功した。現在は、これらの基礎研究で得られた成果をもとに、我々が見出した新規肺胞再生剤のCOPD治療効果を評価する医師主導臨床試験の実施に向けて準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、申請者の見出した肺胞再生分子の肺胞再生分子機構の解明と肺局所に薬物をデリバリー可能な吸入製剤の開発を目指していたが、それらを完成させただけでなく、医師主導臨床試験への応用を視野に入れ研究を展開することが出来ており計画以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
肺胞再生治療の実現の為、今後は申請者が見出した新規肺胞再生分子の臨床応用を目指した研究および開発を進めていく必要がある。 現在、既に医師主導臨床試験の実施に向け準備を行っているが、臨床研究を実施するための費用の確保などの問題があり、製薬企業との共同開発についても打診を続けている。 また、安全性の評価については、吸入剤の試験がサルなどの大型動物で実施しなければならないため、費用面の問題があるものの、前臨床試験のプロトコール開発に関しては前臨床委託企業の協力もあり既に前臨床試験の実施が可能な状況にあり費用が確保でき次第評価を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、マイクロアレイ解析を行い、その結果をもとに日本薬学会年会で発表をする予定であったが、マイクロアレイ解析で同定した遺伝子の数が200種類にのぼり定量的PCR法での再現性の確認が今年度中には間に合わなかった為、計画を一部変更して定量的PCR解析を継続して進める必要性がある為、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由の為、定量的PCR解析に必要なプライマーや試薬代と、学会での発表を日本薬剤学会もしくは日本DDS学会年会で行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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