慢性閉塞性肺疾患(COPD :chronic obstructive pulmonary disease)は世界の死亡原因の第3位(患者数8000万人以上)であるが、破壊された肺胞を修復する有効な根治的治療法は未だ存在していない。 申請者は、COPDの根治的治療法の確立を目指して、破壊された肺胞の再生を作用点とする新規化合物の探索を行った。その結果、世界で初めて活性型ビタミンD3がヒト肺胞上皮幹細胞を効率的に分化誘導し肺胞再生効果を有するという新規の知見を発見した(特許出願中)。さらに、活性型ビタミンD3がどのような分子機構によってヒト肺胞上皮幹細胞の分化を誘導するか明らかにした。 また、既に臨床で骨粗鬆症等に使用されている活性型ビタミンD3経口製剤では、高カルシウム血漿による重篤な副作用が報告されており、副作用の問題がない投与量では肺局所における有効治療濃度に達しないことが推定される。そこで、活性型ビタミンD3を用いたCOPD再生治療法確立の為には、肺局所に存在する肺胞上皮幹細胞への効率的な薬物送達技術の構築が必要となる。申請者の研究グループは、既に新規経肺投与用乾燥粉末吸入システム(72カ国で特許登録済み)を開発し、タンパク質やペプチド等の生体高分子の経肺製剤を開発してきた。そこで、本研究では、肺胞再生を目指した新規慢性閉塞性肺疾患の治療薬として、肺胞幹細胞指向型ビタミンD3経肺システムを構築しCOPD治療効果を評価することで革新的なCOPD根治的治療法を構築した。
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