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2013 年度 実施状況報告書

癌の診断・治療法開発を目指した放出孔サイズ制御型の腫瘍低pH応答性ナノ粒子の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25860030
研究種目

若手研究(B)

研究機関京都薬科大学

研究代表者

濱 進  京都薬科大学, 薬学部, 講師 (60438041)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード腫瘍微小環境 / 低pH / ドラッグデリバリー / 薬物放出
研究概要

腫瘍内微弱低pHは腫瘍標的のための環境因子として着目されている。本研究では、この腫瘍低pHに応答して物性が変化する2種類のペプチドを各々リポソーム膜内・表面に搭載することで、体内動態および薬物放出に優れた新規薬物運搬ナノ粒子を開発することを目的した。平成25年度は、腫瘍内の微弱低pH環境下において、ナノ粒子からの薬物放出が促進されるナノ粒子を開発するために、微弱低pH応答性の膜不安定化ペプチドSAMPを設計するとともにリポソーム膜内にSAMPを組み込んだナノ粒子(SAMPリポソーム)を構築し、その機能性を評価した。SAMPリポソームにカルセイン(低分子化合物のモデル薬物)を封入した場合、pH 6.5において、約100%のカルセイン放出が認められた。またSAMPリポソームの脂質組成を検討した結果、負電荷脂質を含有する組成に比べて、正電荷脂質を含有する組成のリポソームの方が、微弱低pH下における薬物放出能が高いことが明らかとなった。さらに、SAMPリポソームから放出可能な薬物のサイズを検討した結果、モデル高分子薬物のデキストラン (3kD) は、SAMPリポソームから全く放出されなかった。また、カルセインとデキストランを共封入したSAMPリポソームでは、低分子のカルセインが選択的に放出され、デキストランの放出は認められなかった。以上の結果より、SAMPリポソームは腫瘍微弱低pHにおいて、低分子薬物を選択的に放出可能な薬物運搬ナノ粒子であると考えられる。平成26年度はSAPSリポソームに体内動態制御素子として低pH応答性脱離型PEGを搭載し、その機能性を評価する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

H25 年度は、腫瘍低pHに応答して物性が変化する2種類のペプチドを各々リポソーム膜内・表面に搭載したナノ粒子の構築し、in vitroにおける機能性を評価することを目的とした。微弱低pHにおける薬物放出を促進するために、リポソーム膜内に搭載する微弱低pH応答性の膜不安定化ペプチドSAMPを設計し、それを搭載したリポソームの薬物放出促進を確認することができた。また薬物放出能を指標として、リポソームの脂質組成の最適化を行い、正電荷脂質を含むリポソームが最も薬物放出能が高いことを明らかにするとともに、放出可能な薬物サイズも明らかにした。さらにSAMPの構造活性相関を検討し、低pH応答性の薬物放出に必要なぺプチド配列を同定するとともに、SAMPリポソームの薬物放出メカニズムに、低pH下におけるSAMP構造変化が関与していることを明らかにした。リポソーム膜内にSAMPを搭載したナノ粒子に関しては、計画通りに研究を進めることができたが、SAMPリポソームの機能性解析に集中して取り組んだため、低pH応答性の体内動態制御素子(低pH応答性の脱離型PEG)を修飾したナノ粒子の構築に関しては計画に比べて若干遅れているのが現状であり、平成26年度は効率的に研究を進める予定である。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、はじめに低pH応答性の脱離型PEG(SAPS-PEG)修飾ナノ粒子の構築とその機能性を評価する。SAPS-PEGは既に設計済みであり、平成25年度に最適化したSAMPリポソームにSAPS-PEGを混合することによりナノ粒子の表面修飾を行う。構築したナノ粒子の体内動態を評価するために、Cd含有量子ドットを封入したナノ粒子を担癌マウスへ尾静脈投与し、IVISイメージングシステムを用いてナノ粒子の体内分布を継時的に観察するとともに、一定時間後の血液、腫瘍および主要組織内のCd量をICP-MSにより定量する。
また蛍光イメージングによる低pH下の癌検出システムを開発するために、SAPS-PEGを修飾したSAMPリポソーム内にFRET複合体を封入したナノ粒子を担癌マウスへ投与し、IVISイメージング装置により、低pH下の腫瘍を検出可能かどうか評価する。
さらに、SAPS-PEGを修飾したSAMPリポソーム内に抗腫瘍活性を有するTGF-β阻害剤およびanti-C7orf24 siRNAを共封入し、担癌マウスへ投与した際の抗癌効果を評価する。具体的には、TGF-βシグナル阻害による微小環境形成阻害は血管新生阻害を抗CD31抗体、マトリックス形成阻害を抗テネシン抗体を用いて免疫染色により評価する。また、in vivo RNAi効果は摘出腫瘍内のC7orf24 mRNA 量をreal time PCRにより、細胞死をヘマトキシリン・エオシン染色およびTUNEL染色により評価する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 その他

すべて 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [備考] 京都薬科大学薬品物理化学分野

    • URL

      http://labo.kyoto-phu.ac.jp/bukka/

  • [産業財産権] 弱酸性pH応答性ペプチド及び該ペプチドを含むリポソーム2013

    • 発明者名
      小暮健太朗 濱進
    • 権利者名
      小暮健太朗 濱進
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2013/078497
    • 出願年月日
      2013-10-22
    • 外国

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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