研究課題/領域番号 |
25860031
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
亀井 敬泰 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (40637451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳デリバリー / 経鼻投与 / 細胞膜透過ペプチド / バイオ薬物 / 非侵襲的デリバリー / インスリン / アルツハイマー病 |
研究概要 |
本研究では、薬物の直接的脳送達経路として経鼻ルートに着目し、細胞膜透過ペプチド (Cell-Penetrating Peptides: CPPs) の併用投与を介してバイオ薬物の鼻粘膜上皮への取込みを増大させ、その結果、薬物脳移行性および治療効果を革新的に高めることを目的としている。 本年度はまず、モデルバイオ薬物であるインスリンをマウスおよびラットに経鼻投与した後の血中吸収と脳移行を比較し、バイオ薬物の脳デリバリー経路としての経鼻ルートの有用性について検証した。また、代表的CPPであるpenetratin併用時のインスリン吸収性および脳移行性の変動を評価した結果、特にD-体penetratinがインスリンの全身吸収の大きな変動を伴わずにインスリン脳移行性を上昇させることを明らかにした。さらに、penetratin併用経鼻投与後のマウスおよびラットより摘出した脳を細分化し、インスリン脳内分布を詳細に解析した結果、大脳皮質、小脳、脳幹、さらには海馬においてもインスリン濃度の上昇が認められた。現在Positron Emission Tomography (PET) イメージングを利用して、鼻腔から脳各部位へのインスリン移行性の非侵襲的かつリアルタイム解析を進めている。 一方、当初は2年目以降に実施を予定していた各種中枢活性バイオ医薬品の経鼻中枢デリバリーにおけるCPPs併用投与の応用性についても、本年度すでに評価を開始した。Penetratin併用によりグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) や血管作動性超ペプチド (VIP) の鼻腔から脳への移行性が増大したことから、インスリン以外の中枢活性バイオ医薬品の鼻腔を介した脳デリバリーにおいてもCPPsが有用となることが示唆された。各種バイオ薬物の脳移行への応用性について、現在さらに詳細な検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画に従って、研究は順調に進展している。また、研究成果は随時発表している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、Positron Emission Tomography (PET) イメージングを利用した経時的定量評価により、鼻腔から脳へのインスリン移行性をpenetratinが増大させていることを実証する。 さらに、CPPs併用経鼻投与法により脳へと送達されたバイオ薬物が脳内において活性を保持し、中枢疾患に対する治療効果を発揮しうるのかについて薬理学的観点から本手法の有用性を実証する。特にアルツハイマー病モデルマウスを用いアミロイドβ沈着量や記憶学習能力の定量評価法を確立し、CPPs経鼻併用投与を介して脳送達されたインスリンが中枢薬理活性を保持していることを定量的に証明することを目標とする。 一方、種々のペプチド・タンパク質性薬物の脳送達へのCPPs併用経鼻投与法の応用性を拡大させるため、オキシトシン、GLP-1、Exendin-4およびVIP等の各種薬物の鼻腔から脳への移行特性に及ぼすCPPsの影響を経時的・定量的に評価する。また、インスリンを含むこれらバイオ薬物の経鼻投与を介した脳送達を最も効率的に増大させるCPPsを見出すために、オリゴアルギニンおよびTat等の種々のCPPsによる脳移行促進作用を比較し、最適な経鼻投与型バイオ薬物送達法の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度において必要な試薬、消耗品および機器等を研究進捗に合わせて購入した結果、上記の次年度使用額が生じた。 次年度に予定している支出の大部分は、バイオ薬物やエンザイムイムノアッセイキット等の購入、細胞膜透過ペプチドの合成委託費用、各種動物実験にかかる消耗品費である。それらに加え、国内外学会参加旅費および英文校閲費等の成果発表用の支出を予定している。
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