昨年度に引き続き、非可逆的カドミウムイオン蛍光プローブの開発を目的とし、様々な誘導体の合成を行った。特に昨年度合成した、カドミウムイオンとの反応の反応開始点となる部分に芳香族アミノ基を有する化合物を元に誘導体を種々合成した。しかしながら、芳香族アミノ基の低い求核性のため、合成した各種誘導体において水中では望みのカドミウムイオンとの反応がほとんど進行しないことが明らかになった。水中で機能しなければ実用的なプローブとは言えず、プローブの基本構造として芳香族アミノ基を有する化合物は適さないと判断した。そのため、反応開始点に脂肪族アミノ基を配した化合物を種々検討することとし、まずはその合成法を確立した。そして、合成した各種化合物について、様々な条件下でカドミウムイオンとの反応性や蛍光応答性を調べた。その結果、非可逆反応により蛍光応答を示すプローブの基本構造を確立することに成功した。 また、高性能なカドミウムイオンプローブを開発するという当初の目的に沿って、昨年度に見出した配位化学に基づいたカドミウムイオンプローブについて、そのプローブ性能や各種誘導体の蛍光特性を詳細に調べ、性能の向上を図った。その結果、選択性や感度が非常に高い、実用的なカドミウムイオンプローブを得ることに成功した。また、その得られたプローブを生細胞に適用し、蛍光顕微鏡を用いて細胞内カドミウムイオンイメージングが可能なことを確認した。
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