本研究ではソフトなイオン化法であるコールドスプレーイオン化質量分析法(CSI-MS)を用いて,弱い相互作用で構築された化合物を標的とした反応追跡を行った.多成分配位高分子の可溶性配位オリゴマーを検出するために,金属間をつなぐ有機架橋配位子(連結配位子)と金属の配位環境を覆う配位子(留め具配位子)を異なる比で混合後,金属との錯形成を行い,CSI-MSにより追跡した.得られた溶液を結晶化したところ,確かに無限一次元鎖構造を持つ配位高分子と孤立分子が得られた.この構造変化の配位子比はMSスペクトルで観測されたイオンピークの変動と関連していることが分かった.つまり,結晶化によって得られる配位化合物の構造変化点をCSI-MSで観測される可溶性配位オリゴマーに帰属されるイオンピーク強度の挙動から判断出来ることが分かった.また,ソフトイオン化のスペクトルで得られるイオンピークにはフラグメンテーションが起こらないという特徴を活かした解析方法を開発,実践した.これにより多数の溶媒や塩を伴ったピークを容易に帰属することができるようになった.
|