研究課題
Positron Emission Tomography (PET)による経鼻投与後の薬物吸収可視化と薬物動態学的解析を行った。PET画像データのPK解析から、薬液の投与体積、製剤添加物による鼻腔内滞留性の変化を吸収速度定数、mucociliary clearance等のパラメータを薬物速度論的手法により算出した。一方で、鼻腔に近接する嗅球や脳基底部は高濃度の鼻腔内[18F]FDGによるspill-over現象により脳内濃度の正確な評価ならびに直接移行性の可視化が困難であることが明らかとなった。鼻腔内から脳への薬物直接移行性評価研究として、D2受容体拮抗薬[11C]Racloprideを静脈内投与後にPET撮像を開始し、10分後に血液脳関門(BBB)非透過性の同じくD2受容体拮抗薬であるDomperidoneの非標識体を鼻腔内投与することで、脳へ直接移行したDomperidoneによるPETプローブの脳内D2受容体からの追い出し効果を視覚的・薬物動態学的に捕らえることで鼻腔-脳直接移行性を検証した。その結果、D2受容体が高密度の線条体に[11C]Racloprideの強い集積が観察されたが、Domperidone鼻腔内投与により放射活性集積が低下し、また小脳ReferenceによるLogan plotにより得た受容体結合能(BPND)も低下した。さらに鼻腔から脳へと直接移行したDomperidoneによる[11C]RacloprideのD2受容体結合阻害をPET画像として視覚的に捉えることに成功した。PETにより経鼻投与製剤の開発・評価が容易になると同時に、脳への薬物送達の可視化という重要性の高い結果が得られた。また、難血液脳関門透過性薬剤の代替ルートとしての鼻腔-脳への直接移行性評価ツールを開発した点でも非常に意義深く、包括的なPET経鼻吸収性評価システムを構築できた。
すべて 2015 2014
すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)