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2013 年度 実施状況報告書

ジアシルグリセロールキナーゼδを分子標的とした2型糖尿病治療法開発への基盤構築

研究課題

研究課題/領域番号 25860042
研究種目

若手研究(B)

研究機関千葉大学

研究代表者

堺 弘道  千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (00375255)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードジアシルグリセロールキナーゼ / 2型糖尿病 / 薬物療法 / 食餌療法 / ホスファチジン酸 / 脂肪酸
研究概要

本研究の目的は,ジアシルグリセロール(DAG)キナーゼδ(DGKδ)を分子標的とした新たな2型糖尿病治療法開発(新規薬剤・食餌療法開発)へ向けて,1. DGKδ特異的活性賦活剤のスクリーニング・開発,2. DGKδの転写・発現調節機構の解明,3. DGKδのDAG脂肪酸鎖選択性を解明することである.研究計画書に基づき1-3についての研究を遂行し,以下の成果を得た.
1. スクリーニングには大量のDGKδの精製タンパクを必要とする.そこで,大腸菌低温発現系を用いて発現させたDGKδを硫安分画により濃縮した後,陰イオン交換クロマトグラフィー及びNi樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて,高純度(純度90%以上)のDGKδを精製した.精製したDGKδはDGK活性を示した.
2. Exon 1近傍に脂肪酸に関連する転写因子PPARαの結合配列の存在を類推した.従って,筋管に分化させたマウスC2C12細胞に種々の脂肪酸を添加したところ,ミリスチン酸(14:0)はDGKδのタンパク発現量を濃度依存的に増加させ,さらに,mRNA量も増加させることがわかった.これらの結果から,DGKδはミリスチン酸により転写段階において正に発現制御されることが示唆された.
3.DGKδは筋細胞において高濃度グルコース刺激(5分)により活性を増加させる.このグルコース刺激により,C2C12筋芽細胞の種々のPA分子種の量が増加するが,DGKδがどの分子種の産生に関与しているのかをLC/ESI-MSを用いて調べた.その結果,siRNAを用いてDGKδの発現量を抑制したとき,パルミチン酸(16:0)を含有する30:0-, 32:0-, 34:1-, 34:0-PAの産生が抑制された.これらの結果から,DGKδはグルコースに応答してパルミチン酸を含有するDAG分子種に選択性を示すことが考えられた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

薬剤スクリーニングに関する研究においては,大腸菌低温発現系を用いて発現させたDGKδの高純度の精製法を確立することに成功した.しかし,計画していたスクリーニングについては,高純度の精製法の確立に一定の時間を必要としたため年度内の実施は困難であった.一方で,食餌療法開発に向けた研究においては,ミリスチン酸が転写段階でDGKδの発現を正に制御すること,そしてDGKδはグルコースに応答してパルミチン酸を含有するDAG分子種に選択性を示すことが考えられ,予定通りの成果を得た.従って,全体的には本研究は平成25年度の実施計画に基づきおおむね順調に進展していると判断した

今後の研究の推進方策

1. 薬剤スクリーニングのために,大腸菌低温発現系を用いて活性を有するDGKδを高純度に精製する系を確立することに成功した.従って,今後はDGKδを大量に調整した後,マイクロプレート・ADP-発光検出系を用いた独自のハイスループットDGK活性測定系を用いてスクリーニングを行う.
2. 食餌療法開発に向けた研究においては,DGKδは転写段階でミリスチン酸が転写段階でDGKδの発現を正に制御することから,26年度は転写因子(PPARα)が結合するDGKδのpromoter配列をルシフェラーゼ発光法を用いて同定する.さらに,脂肪酸に関連する転写因子(PPARα)を骨格筋細胞(C2C12筋芽細胞)に高発現させ,ミリスチン酸添加時のDGKδ転写・発現の増加を確認し,栄養関連転写因子の同定を行う.栄養関連転写因子を同定した後,ミリスチン酸を培地中に添加し,糖取り込み促進効果を調べる.また,PPARαのみならず,糖・脂質代謝に関与するPPARγとPPARδを含めた他の因子についてDGKδの転写・発現と糖代謝との寄与について検討を行う.さらに脂肪酸のみならず,他の栄養因子の探索も行う.
3. siRNAを用いた実験系により,DGKδはグルコースに応答してパルミチン酸を含有するDAG分子種に選択性を示すことが考えられたことから,今度は逆にDGKδを高発現させたときにも,同様の選択性を示すのか否かを確認する.また,DGKδはグルコースに応答してどの代謝経路に由来するDAGを基質とするのかを各種代謝経路の阻害剤を用いて明らかにする.さらに,DGKδによって代謝されるDAG分子種の糖代謝への影響を評価するために,培地中の特定の脂肪酸分子種(DGKδによって代謝されるDAG分子中に含まれる脂肪酸)を添加し,PKC活性の増加と糖取り込み能の低下を調べる.

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Diacylglycerol kinase γ is a novel anionic phospholipid binding protein with a selective binding preference.2014

    • 著者名/発表者名
      Takeshita, E., Kume, A., Maeda, Y., Sakai, H., and Sakane, F.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 444 ページ: 617-621

    • DOI

      doi: 10.1016/j.bbrc.2014.01.116.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Evaluations of the selectivities of the diacylglycerol kinase inhibitors R59022 and R59949 among diacylglycerol kinase isozymes using a new non-radioactive assay method.2013

    • 著者名/発表者名
      Sato, M., Liu, K., Sasaki, S., Kunii, N., Sakai, H., Mizuno, H., Saga, H., Sakane, F.
    • 雑誌名

      Pharmacology

      巻: 92 ページ: 99-107

    • DOI

      doi: 10.1159/000351849.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Osmotic shock-dependent redistribution of diacylglycerol kinase η1 to non-ionic detergent-resistant membrane via pleckstrin homology and C1 domains.2013

    • 著者名/発表者名
      Matsutomo, D., Isozaki, T., Sakai, H., and Sakane, F.
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 153 ページ: 179-190

    • DOI

      doi: 10.1093/jb/mvs130.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Induction of filopodia-like protrusions in N1E-115 neuroblastoma cells by diacylglycerol kinase γ independent of its enzymatic activity: potential novel function of the C-terminal region containing the catalytic domain of diacylglycerol kinase γ.2013

    • 著者名/発表者名
      Tanino, F., Maeda Y., Sakai, H., and Sakane, F.
    • 雑誌名

      Mol. Cell. Biochem.

      巻: 373 ページ: 85-93

    • DOI

      doi: 10.1007/s11010-012-1477-6.

    • 査読あり
  • [学会発表] Cell stimulation-dependent phosphorylation/consumption of various diacylglycerol sepecies by diacylglycerol kinase isozymes2013

    • 著者名/発表者名
      Fumio Sakane and Hiromichi Sakai
    • 学会等名
      The 86th Annual Meeting of the Japanese Biochemical Society
    • 発表場所
      Yokohama
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] グルコース刺激時にジアシルグリセロールキナーゼδが代謝するジアシルグリセロール分子種2013

    • 著者名/発表者名
      堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] Overlay法によるジアシルグリセロールキナーゼδのプレクストリン相同ドメインとリン脂質の相互作用の解析2013

    • 著者名/発表者名
      久米 愛子,竹下 依那,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] インターロイキン-2に応答したジアシルグリセロールキナーゼαの基質選択性の解析2013

    • 著者名/発表者名
      水野 悟,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] 脳におけるジアシルグリセロールキナーゼδの発現部位の解明及び脳特異的な本酵素ノックアウトマウスの表現型解析2013

    • 著者名/発表者名
      臼木 貴子,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] 脂質代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼδ,ηの大腸菌を利用した大量発現・精製・性質解析2013

    • 著者名/発表者名
      米野井 優,斎藤 雅文,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼη-ノックアウトマウスの表現型の解析2013

    • 著者名/発表者名
      磯崎 丈志,臼木 貴子,米野井 優,松友 大介,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼδの脂肪酸による発現制御2013

    • 著者名/発表者名
      崎山 静花,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼαのCa2+に応答した分子内相互作用解析2013

    • 著者名/発表者名
      山本 達也,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] インスリン抵抗性を制御するDGKδによる糖応答性DG分子種選択的代謝2013

    • 著者名/発表者名
      堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      新学術領域「自然炎症」+「脂質マシナリー」合同若手ワークショップ
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      20130702-20130704
  • [学会発表] LC/ESI-MSを用いたホスファチジン酸分子種の定量的分析法の確立とジアシルグリセロールキナーゼαの基質選択性の解析2013

    • 著者名/発表者名
      水野 悟,堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      日本脂質生化学会
    • 発表場所
      宮城
    • 年月日
      20130606-20130607
  • [学会発表] 糖代謝に関わる脂質代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼδの基質選択性の同定

    • 著者名/発表者名
      堺 弘道,坂根 郁夫
    • 学会等名
      千葉疾患プロテオミクス研究会
    • 発表場所
      東京
    • 招待講演
  • [備考] 千葉大学大学院理学研究科基盤理学専攻生体機能科学研究室ホームページ

    • URL

      http://biofunction.chem.chiba-u.jp/bfc/Top_Page.html

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公開日: 2015-05-28  

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