研究実績の概要 |
ジアシルグリセロール(DAG)キナーゼδ(DGKδ)を分子標的とした新たな2型糖尿病治療法開発へ向けて,DGKδの転写・発現調節機構を解明するために,昨年度,マウスC2C12筋管細胞においてミリスチン酸(14:0)がDGKδの発現量を転写レベルで正に制御することを示した.26年度においては,このDGKδ発現量の増加時にグルコースの取り込みが増加することを明らかにした.これらの結果から,ミリスチン酸によるDGKδの発現量の増加はグルコースの取り込みを正に制御する可能性が考えられた. さらに,DGKδのDAG脂肪酸鎖選択性を解明するために,昨年度においては,C2C12筋芽細胞におけるDGKδの発現抑制時に,グルコースに応答したパルミチン酸(16:0)含有PA分子種(30:0-, 32:0-, 34:1-, 34:0-PA)の産生が抑制されることを示した.26年度では,逆に,DGKδの高発現時には30:0-, 32:0-, 34:0-PAの産生が増加することを示した.これらの結果から,DGKδはグルコースに応答してパルミチン酸を含有するDAG分子種を選択的に代謝することが強く示唆された.さらに,DGKδが基質とするDAG分子種の供給経路を調べた.その結果,ホスファチジルコリン(PC)特異的ホスフォリパーゼC(PC-PLC)の阻害剤であるD609は,グルコースに応答した30:0-,32:0-,34:0-PAの産生を抑制し,また,30:0-,32:0-,34:0-DAG量も減少させることがわかった.このことから,DGKδが基質とするDAG分子種の少なくとも一部はPCの加水分解により供給されることが示唆された.また,抗DGKδ抗体を用いたDGKδの免疫沈降物はPC-PLC活性を示したことから,DGKδはPC-PLCと直接もしくは間接的に相互作用している可能性が示唆された.
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