研究課題
若手研究(B)
主要組織適合抗原クラスII(MHC-II)は、樹状細胞に発現し外来抗原に対する獲得免疫応答を誘導するが、その細胞表面発現の制御機構は不明である。本研究はMHC-IIの細胞内輸送機構を解明し、MHC-IIの発現制御機構を明らかとすることを目的とする。今年度は以下の成果を得た。1)HeLa細胞を用いた実験により、膜タンパク質の形質膜へのリサイクリングを制御する低分子量Gタンパク質であるRab4およびRab11の不活性化変異体の導入は細胞表面MHC-II発現量を抑制することを見いだした。これはMHC-IIが、Rab4およびRab11を介したリサイクリング経路で細胞表面へ発現することを示唆するものである。2)樹状細胞表面MHC-IIの架橋はMHC-IIのエンドサイトーシスを促進し、発現低下を誘導するが、ダイナミン阻害剤はMHC-IIの架橋による細胞表面発現低下に影響を与えなかったことから、MHC-IIは架橋されるとダイナミン非依存的経路でエンドサイトーシスされることが示唆された。3)インバリアント鎖MHC-II複合体および、抗原MHC-II複合体のユビキチン化および分解を検討し、インバリアント鎖MHC-II複合体は、クラスリン依存的エンドサイトーシスで輸送されるためユビキチン化されないのに対し、抗原結合MHC-IIはクラスリン非依存的エンドサイトーシスによって輸送され、初期エンドソームでユビキチン化され分解されることを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
計画した研究項目の中では、想定以上に進捗したものと、予想より遅れているものがあるが、全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
当初の計画通り、樹状細胞への刺激に伴うMHC-II発現変化における細胞内小胞輸送の役割を解析する。1)前年度明らかとした、Rab4およびRab11によるリサイクリング経路の役割に重点をおいて検討を行う。具体的には、siRNAによるRab4およびRab11のノックダウンを用いて、これらのRabを介する輸送経路のMHC-II輸送における役割を解明する。2)MHC-IIの架橋によって誘導される細胞内シグナル伝達に着目し、MHC-IIの架橋によるエンドサイトーシス促進を誘導する細胞内シグナルを阻害剤を用いて解明する。3)輸送の変化によるMHC-IIの発現変化が、樹状細胞による抗原提示が誘導するT細胞の分化・活性化に与える影響を解析する。
今年度は、費用のあまりかからない、培養細胞による解析を優先しため未使用の予算が生じた。未使用額に関しては、次年度の樹状細胞における解析を遂行する上で適切に使用する。消耗品を中心に研究計画に沿って研究費を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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