主要組織適合抗原クラスII(MHC-II)は、樹状細胞に発現し、外来抗原をT細胞に提示することで獲得免疫応答を誘導するが、その細胞表面発現の制御機構は不明である。本研究ではMHC-IIの細胞内輸送機構に着目し、MHC-IIの発現制御機構を明らかとすることを目的とした。今年度は以下の成果を得た。 1)HeLa細胞を用いた実験により、膜タンパク質の形質膜へのリサイクリングを制御する低分子量Gタンパク質であるRab11およびRab35の不活性化変異体の導入は細胞表面MHC-IIのリサイクリングを阻害することを見いだした。この結果よりMHC-IIがRab11およびRab35を介したリサイクリング経路で輸送されることを示唆された。 2)樹状細胞においてMHC-IIの発現が亢進するLPS刺激によって、Rab11の発現が上昇することを見いだした。またRab11およびRab35はMHC-IIと共局在することを見いだした。これらの結果により樹状細胞においてRab11およびRab35がMHC-IIの発現を調節している可能性が示唆された。 2)樹状細胞表面MHC-IIの架橋はMHC-IIのエンドサイトーシスを促進し発現低下を誘導する。このエンドサイトーシスは、細胞内カルシウムのキレート剤であるBAPTA-AMで阻害されたことから、クロスリンクによるMHC-IIのシグナルに細胞内カルシウム流入が関与することが示唆された。
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