研究課題/領域番号 |
25860052
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
刀坂 泰史 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00583973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PRMT5 / MEP50 / p300/GATA4転写経路 / 心肥大 / 心不全 |
研究実績の概要 |
心疾患は我が国における死亡原因の上位であり、この問題の克服は重要である。これまでに、p300/GATA4転写経路が心肥大から心不全発症に至る遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した。さらに申請者は新規GATA4結合分子としてアルギニンメチル化酵素PRMT5とその活性制御因子MEP50を同定し、心筋細胞においてPRMT5/MEP50複合体がp300/GATA4経路に対し、抑制的に働くことを明らかにした。しかし、その作用分子機構と生体での心肥大及び心不全発症における役割は不明である。そこで本研究では、心肥大及び心不全発症におけるPRMT5/MEP50複合体によるp300/GATA4転写経路調節機構を明らかにすることを目的とした。平成26年度の研究実施計画として、(1) PRMT5メチル化酵素活性の重要性の検討及び (2) 心臓特異的PRMT5発現トランスジェニック (TG) マウスでの検討とした。PRMT5酵素活性欠損変異体を作成し、初代培養心筋細胞における機能解析を行った結果、酵素活性欠損変異体では野生型PRMT5の過剰発現によって認められた心筋細胞肥大抑制効果、転写反応抑制効果が認められなかった。またp300をメチル化しないことも確認した。以上の結果から、PRMT5の心筋細胞肥大抑制効果はそのメチル化酵素活性を介していることが示唆された。TGマウスについては心臓特異的なPRMT5の発現を確認し、またその成長や生存率は同程度であった。しかしPRMT5を心臓特異的に発現させたマウスを飼育すると血圧等を変化させることなく、心臓重量/頸骨長比が増加することが明らかとなった。さらに少数の実験ではあるものの、大動脈狭窄術による圧負荷モデルを作成した結果、PRMT5-TGでは心肥大の亢進がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の全ては達成できていないが、おおむね達成できており、研究としてはおおむね順調に進展していると言える。研究目的 (1) については順調に進展しており、PRMT5酵素欠損体ではp300のメチル化と心筋細胞肥大が抑制されたことから、p300のアルギニンメチル化が重要であることが推測された。研究目的 (2) についても順調に進展しているが、当初の仮説とは異なり、通常飼育および圧負荷モデルによる心臓肥大の促進が認められた。心筋細胞での実験結果と矛盾する可能性があるが、当初の予定通り手術による圧負荷モデルを作成し、十分な結果を得ることで、心肥大および心不全発症におけるPRMT5の生体での機能を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進展しており申請書と特に大きな変更はない。 研究目的 (1) GATA4誘導転写反応におけるp300アルギニンメチル化の機能解析 p300アルギニン点変異体を用いたメチル化の役割の解明 PRMT5によってメチル化されるアルギニン残基を置換したp300変異体を用いて、GATA4依存的転写反応への影響を検討する。p300変異体はすでに作成済みである。PRMT5は野生型p300によって誘導されるGATA4の転写活性を抑制する。そこで変異型p300によって誘導されるGATA4の転写活性に対するPRMT5の抑制効果についてレポーターアッセイにて検討する。またin vitro HATアッセイにより直接p300のHAT活性に与える影響についても検討する。 研究目的 (2) 動物レベルにおけるPRMT5の心肥大・心不全発症における機能解析 大動脈結紮手術 (TAC) により圧負荷モデルを作成し、心肥大への影響を心臓/体重比、組織染色、定量PCR、WB法により調べる。また心臓超音波検査にて心機能も評価する。さらに冠動脈結紮手術による心筋梗塞 (MI) モデルを作成し、TACモデル同様に検討を行う。遺伝子改変マウスは確保できたので、随時解析を進めていく。続いて遺伝子改変マウスのモデルを用いてp300のメチル化やGATA4のアセチル化などを検討することで、PRMT5の作用メカニズムを明らかにする。
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