研究課題
GPR55は、1999年にクローニングされたGタンパク質共役型の受容体である。我々は、ヒトGPR55を発現させたHEK293細胞を用いてリガンドの探索を行い、GPR55がリゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)に対する特異的な受容体であることを報告してきた。しかし、GPR55の機能等に関してはまだ不明な点が多い。今回の研究では、GPR55の動物の体内における分布、内在性リガンドであるLPIの作用について調べた。その結果、免疫系の臓器である脾臓及びリンパ節、消化器系組織である小腸及び大腸などで比較的高い発現が観察された。脳においても発現が見られた。一方、肝臓、腎臓等での発現はほとんど見られなかった。小腸では、十二指腸、空腸、回腸すべてにおいてGPR55mRNAの発現が確認された。また、粘膜層及び筋肉層においてGPR55mRNAの発現が見られた。細胞における発現を調べたところ、リンパ球にGPR55mRNAの高い発現が認められた。一方、上皮細胞におけるGPR55mRNAの発現は低いものであった。脾臓について調べた結果、リンパ球にGPR55mRNAの高い発現が観察され、特にT細胞及びB細胞において高い発現が見られた。次に、GPR55を発現しているヒトBリンパ芽球系細胞株であるIM-9細胞を用いて、抗体分泌に及ぼすLPIの影響を詳細に調べた。LPIは、IM-9細胞の抗体分泌を促進させた。活性は1μM付近から検出され、濃度依存的に増加した。LPI以外のリゾリン脂質には、LPIのような抗体分泌の促進効果は認められなかった。LPIは、GPR55を発現している免疫担当細胞に作用して、抗体分泌の調節等に関与している可能性がある。
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